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【答え】 変形性膝関節症 -立ち仕事避け筋力強化を-

高田整形外科病院 宗廣秀史(板野郡北島町中村)

 変形性膝関節症に伴う足のむくみ(浮腫(ふしゅ))について述べさせていただきます。変形性膝関節症は、加齢、肥満、外傷などさまざまな原因により、関節の軟骨が劣化してすり減っていく病気です。中高年の女性に多く、整形外科的疾患での有病率では腰痛に次いで第2位となっています。

 初期は動作開始時のみ痛みを訴えますが、病期が進むと動作中や安静時にも痛みが生じ、次第に膝の変形や動きの制限が見られるようになります。

 炎症を起こすと関節に水がたまることがありますし、まれに変性した半月板や増殖した滑膜、あるいは遊離体が嵌頓(かんとん)(すきまに入り抜けなくなる)し、突然激痛が生じて膝が動かなくなることもあります。痛みのために日常生活が不自由となり、高齢者の場合は外出しない生活が続くことになります。

 一方、浮腫は、体の水分が異常に増えて血管の外に余分な水分(血漿成分)がたまった状態です。毛細血管内圧の上昇、血液のタンパク質濃度の低下による浸透圧低下、毛細血管透過性亢進によって引き起こされます。

 原因疾患は多数存在し、ほとんど全ての臨床領域に及んでいます。浮腫はその分布により、全身性と限局性に分けられます。

 全身性浮腫としては<1>心不全に伴う心臓性浮腫<2>ネフローゼ症候群や腎不全に伴う腎性浮腫<3>肝硬変に伴う肝性浮腫<4>甲状腺機能低下症などに伴う内分泌性浮腫<5>栄養障害性浮腫<6>薬剤性浮腫<7>特発性浮腫-などがあります。

 限局性浮腫の原因としては<1>感染などによる局所の炎症<2>深部静脈血栓症や下肢静脈瘤などによる静脈還流異常<3>リンパ節切除や関節手術後に見られるリンパ還流異常<4>アレルギー-などが挙げられます。

 変形性膝関節症と浮腫の関係ですが、変形性膝関節症には、静脈・リンパ還流障害の一つである廃用性浮腫が生じることがあります。膝の関節が悪くなると、痛みで十分な歩行ができなくなり、下腿(かたい)の筋力が低下します。下腿の血液を心臓に送り返しているのは筋肉ポンプ(筋肉の収縮と逆流防止の静脈弁によるポンプ)ですので、筋力低下(ポンプの機能低下)で静脈の流れが悪くなり、静脈圧が上がって浮腫が発生するのです。

 また、関節に水がたまって腫れると静脈やリンパの流れが悪くなりますので、浮腫を助長する一因となります。この廃用性浮腫の特徴は、膝関節以下から足先までに限局して存在し、左右同程度の浮腫が見られることです。

 廃用性浮腫の対策としては、長時間の立ち仕事を避け、時に患部を高くすることです。負担のない範囲で下肢を動かし、筋力を強化することが重要です。弾性ストッキングの使用やリンパドレナージなども有効とされています。

 ご相談者の場合ですが、文面から察するとかなり強い浮腫のようです。変形性膝関節症に伴う廃用性浮腫で、40代の比較的若い人に1日中、高度の浮腫が続くことは考えにくいと思われます。深部静脈血栓症や他の重大な疾患が原因かもしれませんので、主治医に相談して内科や血管外科の専門医を紹介していただくのがよいと思います。

徳島新聞2012年8月5日号より転載

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