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【質問】70代の男性です。3年ほど前から両脚のふくらはぎが熱っぽく、ポカポカします。朝、起きた時は何ともなく、動き出すと症状が出ます。半年ほど前から症状がひどくなり、ふくらはぎだけでなく尻や腹も熱がこもるようになりました。歩くのにも違和感があり、とても困っています。改善方法や何科を受診すればいいのか教えてください。    

手束文威 先生  徳島大学病院整形外科
 整形外科で検査 手術も
 【答え】質問者は朝起きた(安静)時は何もなく、動き出した(運動)時に症状が出るとのことで、背骨の中の神経が圧迫されている可能性があります。
 脊椎(背骨)は、頭から腰にかけて頸椎(けいつい)(首の骨)7個、胸椎(肋骨(ろっこつ)がつく背骨)12個、腰椎(腰の骨)5個に分かれています。脊椎には「体を支える」「神経を守る」という二つの大きな働きがあり、脊柱管(背骨の管)が首から脚につながる神経を守っています。正常なら余裕がある脊柱管内の空間が何らかの原因で狭くなり、神経が圧迫されて脚のしびれや痛み、筋力低下を起こします。
 神経が圧迫される場所により、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症か胸髄症が考えられます。
 腰部脊柱管狭窄症は加齢に伴い発症するケースが多く、腰椎の変形で脊柱管内にある神経根や馬尾という神経が圧迫されて起こります。圧迫部位が神経根だと腰から脚にかけての痛み、馬尾だと両脚の広い範囲のしびれや脱力感、脚や会陰部の異常感覚、頻尿や便秘などの排尿・排便障害といった症状が出ます。
 特徴的な症状として、間欠性跛行(はこう)があります。長時間連続で歩くと、脚に痛みが走ったり、ふくらはぎが重く脚が前に進まなくなったりします。こうした症状は立ち止まってしゃがむ、前かがみになるなどの姿勢をとることで一時的に良くなります。
 胸髄症は、胸椎の脊柱管が椎間板ヘルニアや靭帯(じんたい)骨化症(後縦靭帯骨化、黄色靭帯骨化)、腫瘍などで狭くなり、脊髄を圧迫することで起こります。主な症状は▽脚がしびれる▽立ったり、歩いたりすると脚がもつれる▽下り坂を歩くのが怖い-などです。
 胸髄症には、薬や運動療法などの治療は効果がありません。脊髄の圧迫期間が長くなるにつれて歩きにくさが増したり、脚の麻痺(まひ)が出たりする可能性があります。症状が当てはまるようなら、早めに病院で診てもらいましょう。
 医療機関は、まず整形外科を受診してください。レントゲンや磁気共鳴画像装置(MRI)などの検査、神経症状の詳細な診察で神経が圧迫されていないかを確認します。症状の改善のために手術が必要な場合もあります。
 背骨の病気のほか、同様の症状が出るのは、脚の血管が狭くなったり、詰まったりする下肢閉塞(へいそく)性動脈硬化症です。主な初期症状は、脚のしびれや冷感、間欠性跛行で、腰部脊柱管狭窄症とよく似ています。少し異なるのは、下肢閉塞性動脈硬化症は背中を曲げなくても、立ち止まるだけで症状が改善する点です。ただ、治療せずに放っておくと、血管が完全に詰まり、脚が壊死(えし)することがあります。病気が疑われる場合は、早めに循環器科や血管外科を受診してください。

 

【写真説明】脊柱管狭窄症患者(右)の背骨のMRI画像。正常な背骨(左)に比べて脊柱管が細くなっている
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