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【質問】 憂うつでやる気湧かない

 前向きな気分で新年度をスタートさせようと思っていたのですが、何となく憂うつな気分が続き、調子も出ず、やる気も湧いてきません。友人にも「真面目で責任感の強い自分のようなタイプは、うつになりやすいから、深く考え込まないように」と、よく指摘されます。年度替わりの社会的な環境の変化と、人との関わりに心身がうまく適応できず、食事も食べたくなくなったり、食べても下痢が続いたりして、疲労感とイライラのストレスで押しつぶされてしまいそうです。仕事もうまくいかないのですが、しばらく休んだ方がいいのでしょうか。



【答え】 うつ病-重症度に合わせ休養を-

あいざとパティオクリニック(徳島市蔵本町2丁目) 吉田成良

 「憂うつな気分」「調子が出ない」「やる気が湧かない」「食欲不振」「疲労感」「イライラ」「仕事もうまくいかない」などの症状が続き、うつ状態に陥っています。うつ状態は、うつ病以外にも多くの病気で現れます。そのため、うつ病との鑑別診断が必要になります。

 うつ病の診断基準として現在よく用いられているものに、米国精神医学会が作成した「精神障害の診断と統計のマニュアル第4版(DSM-IV)」があります。相談者の場合、表で示した9項目の症状中<1><2><3><5><6>の5項目がそろっていて、これらの症状が2週間以上続いているなら、うつ病(DSM-IVの診断では大うつ病と呼ぶ)と診断します。

 次に鑑別すべき疾患ですが、甲状腺機能低下症のような身体疾患によるうつ状態については内科的な精査で診断できます。うつ状態の場合は必ず甲状腺機能検査などが必要です。また、脳器質的疾患との鑑別も必要ですし、薬物使用によるうつ状態については薬物使用歴を調べることで診断できます。

 そのほか、うつ状態を示す主な精神障害として気分変調性障害があります。従来の診断では神経症性うつ病に相当するもので、「2年以上軽いうつ状態が続くもの」で「症状は大うつ病ほど重くはない」と定義されています。

 また、死別反応もあります。抑うつ気分が愛する人の死に関連し、かつ2カ月未満の持続の場合に、死別反応と診断することになっています。死別が契機になってうつ病が発症することも少なからずあります。その区別はなかなか難しいのですが、同じ状態が2カ月以上続けば(症状がそろっていることが前提)、その時点でうつ病に診断変更することになります。

 さまざまなストレスに反応するかたちで出現し、しかも、うつ病、気分変調性障害、死別反応の基準に該当しない場合に「抑うつ気分を伴う適応障害」を考えます。適応障害は、ストレスが加わってから3カ月以内に症状が出現すること、そのストレスが解消した後は6カ月以内に症状が消失することが条件です。

 以上のことから、質問者はうつ病ではないかと思われます。うつ病治療の原則は、第1に休養、第2に薬物治療、第3に精神療法、第4に環境調整-の4点。

 第1の休養については重症度によって異なります。ご質問の最後に「しばらく休んだ方がいいのでしょうか」とありますが、まずは心療内科、精神科の専門医と、病名や治療の方針と方法などをじっくり相談されて決められてはいかがでしょうか。

うつ病

徳島新聞2012年6月3日号より転載
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