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【質問】 糖質制限で糖尿病改善か

 40代の男性です。10年ほど前から糖尿病にかかり、食事制限をしています。全体の食事量を控えているために痩せています。最近、糖質を取らなければ脂っこい食事や飲酒をしても大丈夫で、むしろ、ご飯やパン、うどんなどが厳禁だと、本で読みました。信用してもよいのでしょうか。どういうメカニズムによるものなのですか。



【答え】 低炭水化物食療法 -極端にならず短期間で-

藤中内科医院 院長 藤中眞一(徳島市昭和町1丁目)

 食事療法は、全ての糖尿病患者における治療の基本であり、出発点です。日本糖尿病学会では、必要最小限のエネルギー量の50~60%を糖質(炭水化物)で、15~20%をタンパク質で、残りの20~25%を脂質で摂取するとされています。

 ご飯やパン、うどんなどを食べないか、ほとんど食べない糖質制限食を低炭水化物食といいます。

 糖質、タンパク質、脂質の3大栄養素を摂取した後の血糖値の変動を見ると、糖質が最も早く、かつ高く上昇します。タンパク質は少し遅れて、中程度の上昇です。脂質はゆっくりとわずかに上昇し、長く続きます。従って、食後の高血糖を抑える最も手っ取り早い方法は、糖質の摂取を控えることです。

 糖質を食べると消化されてブドウ糖となり、吸収されて血糖(血中ブドウ糖)値が上昇します。血糖値の上昇につれて、膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌されます。インスリンの働きで、ブドウ糖はエネルギーとして利用されます。

 余分なブドウ糖は、インスリンの働きで脂肪細胞に取り込まれ、脂肪に合成されて蓄えられます。また、インスリンは脂肪の分解も抑制します。このため、糖質の取り過ぎは太りやすいのです。逆に言えば、糖質を制限する低炭水化物食では痩せやすいのです。

 低炭水化物食を勧めている本では、患者に食前と食後1時間の血糖値を測定してもらい、糖質摂取後は著明に血糖値が上昇することを実感し、その効果を確認するように書かれています。

 対象は肥満の2型糖尿病患者で、体重が減少し、血糖コントロールが良好となった症例を紹介しています。痩せている人は対象外としています。痩せ形の人は、減量は必要なく、薬物治療が必要なことが多いためと考えられます。

 食後の高血糖が動脈硬化を促進し、心脳血管死を増すことは、一般に認められています。動脈硬化予防のため、国際糖尿病連合は、食事をして2時間後の血糖値が140ミリグラム/デシリットル未満となるよう推奨しています。低炭水化物食は動脈硬化予防に役立ちそうなのですが、次のような反対の成績も報告されています。

 最近の肥満2型糖尿病症例を対象とした臨床試験で、低炭水化物食(炭水化物20%、タンパク質20%、脂質60%)と、低脂肪食(60%、20%、20%)を比較すると、全身の動脈硬化症は、むしろ低炭水化物食において悪化するとの成績が示されました。

 低炭水化物食では高タンパク、高脂肪となり、脂質異常症や高タンパクによる腎臓への負荷などが危惧されます。炭水化物の制限も何%くらいが有効で、何%以下になると弊害が出るのか、いまだに明らかにされていません。現時点では低炭水化物食を試みる場合、極端にならず、短期間にとどめるのが無難だと考えます。

 また、アルコールを飲み、かつ糖質をほとんど食べないと、肝臓を悪くします。アルコールは、肝臓から血液への糖の補給をストップさせるので、血糖値は下がります。特に、血糖降下薬の内服中やインスリン注射をしている場合は低血糖を来しますので、飲酒する場合は必ず糖質を取る必要があります。

徳島新聞2011年11月6日号より転載

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