徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 感染防止の対処法は

 保育園で働いている職員です。毎年この時期になると、園内で感染性胃腸炎がはやります。子どもへの指導や、保護者への感染予防の協力をどうお願いすればいいですか。感染した場合の対処法も教えてください。



【答え】 感染性胃腸炎 -手洗い・うがいの徹底を-

板東診療所院長 亀井俊彦(鳴門市大麻町板東)

 感染性胃腸炎とは、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、発熱など、急性の胃腸炎症状を引き起こす病気で、ウイルスや細菌などの感染が原因です。感染性胃腸炎の患者数は例年、11月~翌年1月の冬と、2~4月の春に増加します。冬はノロウイルス、春はロタウイルスが主な原因とされています。「腹の風邪」と説明する医師も多いと思います。夏はサルモネラ、腸炎ビブリオなど細菌性のものや、食中毒によるものが主な原因となります。

 冬の感染性胃腸炎の相談ですので、その代表であるノロウイルス感染症について説明します。ノロウイルス感染症は、2006年から2007年にかけての冬に大流行しました。その特徴として次のことが挙げられます。

 まず、1年を通じて起こりますが、特に冬に増加し、学校や福祉施設、飲食店などで集団発生することがあります。主に、口から侵入して小腸で増殖し、激しい嘔吐、水のような下痢(水様便)を起こします。感染力が強く、極めて少量のウイルスでも感染を起こします。アルコールや逆性石けん(消毒薬)、乾燥にも強く、長期間生き残ります。

 感染経路は、人から人へ伝染する場合と、食べ物を介して伝染する場合があり、集団発生は人から人への感染が主となります。

 人から人への感染には、接触感染と飛沫(ひまつ)感染、空気感染があります。接触感染は、感染者の便、嘔吐物などが付着した便座、ドアノブ、手すり、遊具といった周囲のものに触れ、手を介して口に入ることです。飛沫感染は、便や嘔吐物から飛沫が飛び散り、近くの人や処理する人の手に付着したり、口に入ったりすることで起こります。空気感染は、乾燥した嘔吐物や便からウイルスを含むほこりが舞い上がり、口に入ることで起こります。

 食べ物を介した感染には、不十分な手洗いで手に残ったウイルスが、調理、配膳(はいぜん)などにより食品に付着し、それを食べた人に感染する場合があります。カキなどの二枚貝を十分に加熱しないで食べ、感染することもあります。

 潜伏期間は1~2日程度。症状は、突然の激しい嘔吐、水様便、腹痛などで、高熱はあまり出ません。数日で治まり後遺症はありませんが、症状が消えても2週間程度はウイルスが便に排出されます。特効薬はなく、自然に回復するのを待ちます。症状を軽減する薬を使うことはありますが、治療の基本は脱水に対するものとなります。

 感染症予防には▽感染源対策▽感染経路対策▽感染しやすい人への対策-が基本です。発症した子どもには、嘔吐、下痢などの症状が治まってから登園してもらってください。家庭、施設内で感染を広げないために、手洗い(特に調理前や食事前、トイレの後、感染した人の世話をした後、汚物を処理した後)を徹底し、周囲の消毒も十分に行うことを、保護者にお願いする必要があります。

 子どもが施設で発症した際は、ほかの子どもから隔離し、着替え、清拭(せいしき)、安静など必要な処置を行った上で、保護者に連絡し、医療機関を受診してもらいましょう。嘔吐物、便の処理を行う際には、使い捨てのマスク・手袋、エプロンを着けて、汚物や周囲の処理・消毒を行ってください。消毒には家庭用の塩素系漂白剤を使いますが、専用の消毒剤も発売されています。

 ノロウイルスに対するワクチンはないため、栄養・休息を取り、免疫力を高める方法しかありません。子どもに手洗い、うがいの指導を行うとともに、食事、睡眠を十分に取るように教えてあげてください。

徳島新聞2010年11月28日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.