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【質問】 のどや胃で詰まる感じ

 40代の女性です。数カ月前から、食べたものがのどや胃で詰まる感じがあります。何か病気の兆候なのでしょうか。飲酒や喫煙はしていません。何かアドバイスがあれば教えてください。



【答え】 胃食道逆流症 -生活習慣や内服薬で改善-

日比野病院 副院長 日比野真吾(徳島市寺島本町東2丁目)

 食べたものがのどや胃で詰まる感じがすると、何か悪い病気ではないかと心配される方はたくさんいらっしゃいます。

 診断のためには、もう少し詳しく症状を聞かせていただきたいところです。▽詰まる感じはいつ、何を口にしてもあるのか▽固形物以外に水や茶などの液体でも同じ感じがするか▽詰まる感じはだんだんひどくなっているか、変わらないか▽ほかに体に変わったことはないか▽痛むところはないか▽食欲や便通、体重は変わりないか▽むかむかや食欲不振、胃痛、せき、息苦しさがないか▽酸っぱいものがこみ上げてきたり、胸が熱く重かったりすることはないか-などです。

 “胸焼けがする”と表現される方に症状を細かく伺ってみると、質問者の方の“詰まる感じ”を含めて、これらの症状すべてが、実は“胸焼け”に含まれていることが分かっています。

 このいわゆる“胸焼け”を起こす病気の一つに、胃食道逆流症(GERD)があります。胃食道逆流症は胃の中のものが食道に逆流してくることによって不快な症状を起こす病気です。1週間に1~2回以上症状があればこの病気の可能性があります。内視鏡検査を行って、食道と胃の境目の粘膜が赤くなっていたり、ただれていたりする障害が認められれば、まず間違いないでしょう。

 治療の第一は生活習慣の改善です。▽肥満傾向の方は減量する▽おなかをガードルなどで圧迫しない▽前かがみの姿勢を長時間とらない▽飲み過ぎ、食べ過ぎをしない▽脂肪分の多い食事は避ける▽食後すぐ横にならない-といったことが大切です。また、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という胃酸の分泌を抑える薬を中心とした飲み薬を服用することによって、症状は改善に向かうと思われます。

 ただ、胃食道逆流症以外にも、詰まる感じを起こす病気があります。一つは、食道が食べたものをうまく胃まで運び込んでくれない状態です。この中には、アカラシアという病気があります。食道の中程から胃に向かう運動が減っていて、しかも、胃の入り口(噴門)がうまく開いてくれないために食べ物が詰まる病気です。バリウムによるX線検査で診断されます。

 もう一つは、何かできものがあって実際にものが通りにくくなっている状態です。腫瘍(しゅよう)や、貧血に伴って食道に膜が張って通りにくくなる病気などがあります。いずれも内視鏡検査などで診断されます。しかしこれらの病気は特定の位置で詰まるわけですから、質問者の方の症状にはあまり合わないようです。

 さて、病院を受診して内視鏡検査などの一般的な検査を受けても、何も異常がなかったらどうでしょう。「気のせいでしょう」とか「様子を見てください」とか言われると、ますます不安になってしまいますね。

 実は、胃食道逆流症の中には、内視鏡検査を受けても異常を認めない非びらん性胃食道逆流症(NERD)という病気があります。胃食道逆流症の約半数を占めるともいわれています。しかも、NERDの方で、前述のプロトンポンプ阻害薬が通常の量ではあまり効かない方が少なからずいることが分かっています。このような方は、より専門的な治療が必要になることもあります。

 以上、何か思い当たることがありましたら、まずかかりつけ医にご相談ください。疑問が解消されて、違和感なく楽しく食事ができるようになることを願っております。

徳島新聞2010年10月24日号より転載

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