徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 中性脂肪が急上昇したが

 58歳の男性で、高血圧の治療をしています。前回の健診で、普段105ミリグラム/デシリットルの中性脂肪が750ミリグラム/デシリットルに急上昇していました。中性脂肪が急激に上がる病気があるのでしょうか。治療方法も教えてください。



【答え】 脂肪異常症 -適切な食事や運動で改善-

高杉内科外科小児科脳外科 高杉 緑(徳島市国府町芝原)

 脂肪の中には、LDL(悪玉)コレステロールや、HDL(善玉)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)があり、これらを総称して総コレステロールといいます。

 脂肪は悪者扱いされがちですが、コレステロールは胆汁酸やステロイドホルモンなどの合成に使われるほか、すべての細胞の膜合成にも利用されています。LDLコレステロールは肝臓から身体の組織などに脂肪を運ぶ役目があります。HDLコレステロールは余分な脂肪を肝臓に運搬する清掃車の役目をしています。主に皮下脂肪として蓄えられる中性脂肪も、必要に応じて活動のエネルギー源として活用され、生きる上で欠かせないものです。

 ただ、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が過剰な状態、またはHDLコレステロールが少ない状態を脂肪異常症(高脂血症)といいます。放置すると動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞といった死に至る病気になることもあります。

 脂質異常症は腎機能障害とも関係があり、脂質異常症を改善すると腎機能もよくなることが分かってきています。また「LDL÷HDL」の値が2より小さいと、動脈硬化は改善され、大きいと悪化するといわれています。

 中性脂肪が上がる原因には、体質(肥満)、食事(果物、砂糖、脂肪の過剰摂取)、運動不足、アルコールの飲み過ぎがあります。糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群などの病気でも起こります。血圧を下げる薬の中にも、コレステロール値に悪い影響を与えるものもあります。

 脂質異常症の治療の基本は食事療法です。まず、エネルギー摂取が過剰にならないようにします。1日に必要なエネルギー量の目安は「標準体重×25~30キロカロリー」です。バランスよく食べることが必要ですが、動物性脂肪(脂身)やバターなど飽和脂肪酸を多く含んだ食品はコレステロール値を上昇させる働きがあるため、できるだけ避けてください。その代わり、コレステロール値を下げる働きのある不飽和脂肪酸を多く含んだ魚や植物性の油を摂取します。また、食物繊維はコレステロールを体外に排出する働きがあります。食物繊維の豊富な大豆製品、野菜、海藻を多くとるよう心掛けてください。

 次に運動療法です。運動を行うとHDLコレステロール値が増加し、中性脂肪が低下します。大きな筋肉を動かす有酸素運動が効果的で、平地での早歩き、水泳、水中歩行、サイクリング、ラジオ体操、太極拳などがお勧めです。30分以上の運動を毎日続けることが望ましいですが、1時間の運動を週3回でもいいでしょう。時間がなくても日常生活で身体を動かす工夫をしてください。

 食事療法や運動療法を行っても脂質異常症が改善しないときは、薬物療法があります。脂質異常症の治療薬は数種類あり、コレステロールの合成を抑えるものと、食事から脂肪の吸収を抑えるものがあります。この2つは併用もできます。

 薬物療法の副作用には肝機能の悪化があります。まれですが、横紋筋融解症という筋肉の病気を起こした報告もあります。いずれも定期的に肝臓や腎臓の機能検査を受け、正しい服用をすれば心配はいりません。薬物療法では▽食事療法や運動療法は継続する▽勝手な判断で中断しない▽定期的に通院する-などを心掛けてください。

徳島新聞2010年9月26日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.