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【質問】 手足にかゆみある水泡

 2年くらい前から手足にかゆみのある水疱(すいほう)ができ、ステロイドを使って何とかしのいでいます。しかし、薬の量を減らすとすぐに悪化し、困っています。医者からは「掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症」と診断されて「長い付き合いになる」と言われました。薬以外には、どのようにこの病気と付き合ったらいいのでしょうか。生活習慣などでコントロールできる方法などがあれば教えてください。



【回答】 掌蹠膿疱症 -患者の約8割が喫煙者-

あなん皮フ科クリニック 山本忠正(阿南市日開野町)

 手や足にかゆみのある水疱ができる病気はいろいろあります。代表的なものは、水虫(足白癬(あしはくせん))、異汗性湿疹(しっしん)、そして今回ご質問の掌蹠膿疱症です。

 どれも症状はよく似ていますが、足白癬は皮膚の角質の一部を取り、真菌の有無を検査すると判定できます。異汗性湿疹はほぼ夏に起こり、かゆみが非常に強く、膿疱を生じません。ご質問の方は掌蹠膿疱症と言われているそうですので、今回はこの病気について詳しく説明します。

 掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に膿疱ができる病気です。膿疱だけでなく水疱や赤い斑点が混じり、かさぶたになって一部がはげ落ちます。これらの症状が周期的に出たり引いたりします。膿疱に細菌などがいるわけではなく、ほかの人には感染しません。皮膚科医であれば診るだけでほぼ診断できます。

 原因は、扁桃(へんとう)炎や虫歯などの感染、歯科金属などの金属アレルギーが関係していると言われていますが、まだはっきりとは分かっていません。これらの検査を積極的にしても、2割ぐらいの人しか究明できず、8割の人は対症療法で経過を見ていくしかありません。そのため治療期間は長くなりがちです。

 治療は、大きく内服療法と外用療法、紫外線療法に分けられます。内服療法は抗生物質、ビタミンA誘導体、抗アレルギー薬、ビタミンHなどを使います。外用療法にはステロイド、ビタミンD、サリチル酸などがあります。紫外線療法は専用の機器によって掌蹠に紫外線を当てて病状を抑えます。

 どれも特効薬というものではありませんが、患者の症状に合わせて、治療の効果と副作用、通院期間などを考慮し、組み合わせて使うのが一般的です。平均して3~7年で軽快すると言われているので、かかりつけ医から説明があったように、焦らず、長い付き合いになるつもりで治療を続けていきましょう。

 また、この病気の合併症に、胸のあたりに関節痛が生じる胸肋鎖(きょうろくさ)関節痛というものがあります。整形外科の先生と連携しながら治療しますが、掌蹠膿疱症に関係しているということを知っておかないと診断がつきにくい場合があります。

 最後に生活習慣での改善点ですが、日常生活での制限は特にありません。生活習慣のみで病状をコントロールする確実な方法は無いのが実情です。ただし、この病気の発症には喫煙が関与していると言われています。掌蹠膿疱症になった患者さんの約8割が喫煙をしています。禁煙をしても症状に変化が現れないことも多いのですが、喫煙をしている方であれば、健康のためにも禁煙をお勧めします。

徳島新聞2010年1月24日号より転載

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