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【質問】 レーザー手術勧められた

 32歳の女性です。例年、花粉によるアレルギー性鼻炎に悩んでいますが、先日、かかりつけの耳鼻科医から、鼻の穴へのレーザー手術を勧められました。短時間で済み、危険はないとのことなのですが、一体どういう内容の手術なのでしょう。副作用などはないのでしょうか。



【答え】 アレルギー性鼻炎 -鼻粘膜を蒸散し症状改善-

阿南共栄病院 耳鼻咽喉科 東 貴弘

アレルギー性鼻炎は、くしゃみ、水様鼻汁(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)の3つの症状がある鼻粘膜のアレルギー疾患です。スギ花粉などを抗原とする季節性アレルギーや、ハウスダスト、ダニなどを抗原とする通年性アレルギーに分けられます。季節性、通年性ともに、近年有病率は増加し、スギ花粉症の有病率は約26%と報告されています。

 治療には、抗原の除去と回避、内服などの薬物療法、特異的免疫療法、手術などがあります。

 相談のレーザー手術は、鼻粘膜を蒸散する手術です。分かりやすく説明するために「焼灼(しょうしゃく)」や「焼く」といった表現がよく用いられますが、医学的には蒸散と表現するのが正しく、レーザーのエネルギーで、鼻粘膜を気化・蒸散します。

 鼻の中には、上、中、下(か)鼻(び)甲介(こうかい)という、こぶのような構造物があり、鼻粘膜で覆われています。アレルギー性鼻炎の症状は、鼻粘膜に抗原が付着することから始まり、鼻汁が分泌され、くしゃみを誘発し、粘膜が腫れることで鼻づまりになります。そこで、鼻粘膜を蒸散し、アレルギー反応を起こす場所を減らそうという手術です。

 すべての鼻粘膜を蒸散するのではなく、一番大きな下鼻甲介の粘膜のみを対象にするので、嗅覚(きゅうかく)などには影響ありません。

 手術の対象となるのは、他の治療法でも改善がみられない場合、特に鼻閉に困っている場合などです。大人はもちろん、鼻内の処置が可能なら、小学生でも受けることができます。効果は非常に高く、特に鼻づまりに対しては、80%以上の改善率といわれています。もちろん、くしゃみ、鼻汁にも効果があります。

 治療は、一般的に外来で行われることが多く、入院の必要はありません。麻酔は鼻内に麻酔液を染み込ませたガーゼを十五?二十分ほど入れておくだけで完了します。

 この後、防御用の眼鏡やシールなどで目を覆い、鼻の穴から細い棒状物を挿入、レーザーを照射します。手術時間は5?10分程度で、出血もほとんどありません。やや焦げたようなにおいがするだけで、ほとんど痛みも感じません。術後に帰宅可能です。

 手術後、一時的に症状が強くなりますが、約2週間で少しずつ自覚症状が改善してきます。鼻粘膜は再生してくるため、効果は永久的ではないものの、平均数カ月程度、長ければ一年以上持続することもあります。効果がなくなれば、再び手術を受けることも可能です。

 レーザー手術は、麻酔の方法や照射回数など、手術に関しても施設によって多少の違いがあります。

 術中・術後の合併症は、一時的な鼻症状の悪化や鼻出血、当日の痛みを訴える人が時々いる程度です。術後、鼻内にかさぶたが付着し、鼻汁が多く分泌されるため、受診を要することがあります。

 ところで、花粉症に対する場合は、症状の強いときには、この治療はあまり勧められません。また鼻腔(びくう)内の形態異常などにより、レーザー手術ができない場合もあります。

 今回の相談者は、内服治療などでも改善せず、かかりつけ医からも勧められているのであれば、試してみてもよいのではないでしょうか。

徳島新聞2009年1月25日号より転載

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