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【質問】 2年前の閉経後から高血圧

 51歳の女性です。2年前の閉経直後から高血圧で悩んでいます。女性ホルモン補充療法が効果的と、知人から聞いたのですが本当でしょうか。また、どれくらいの間隔で補充すればよいか、副作用の有無などについても教えてください。



【答え】 女性ホルモン補充療法 -更年期症に効果 降圧は期待薄-

河野内科 河野 知弘(徳島市大道)

 高血圧は「静かな殺し屋」といわれるぐらい症状がなく、放置しておくと動脈硬化や脳卒中、心臓病など重篤な合併症を引き起こします。わが国の高血圧患者約3,500万人を男女別、年代別で見ると、女性は男性と比べて30代で約3分の1、40代で約2分の1と少ないのですが、60歳以降では男女差がなくなります。

 50歳ごろから女性の高血圧が急増するのは、女性ホルモンの減少が原因といわれています。女性ホルモンは、血圧を調節しているRAS系という内分泌系への直接作用や、NO系を介した血管拡張反応で血圧を下げます。

 女性ホルモンが減少すると、顔のほてりやのぼせなどの自律神経失調症状、頭重感や不眠などの精神神経症状、外陰部掻痒(そうよう)や尿失禁、膣(ちつ)萎縮(いしゅく)などの泌尿器症状、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)など多くの症状・疾患が出てきます。これが更年期障害です。

 更年期障害に対しては、女性ホルモン剤を用いたホルモン補充療法(HRT)、漢方薬や抗不安薬などの薬物療法、精神療法、生活指導がなされます。HRTは特に、自律神経症状、精神神経症状、膣萎縮などに優れた効果を示しますし、閉経後の骨粗鬆症にも効果を発揮します。

 HRTの投与間隔はホルモン製剤の種類によって異なります。いつまで続けるかですが、更年期症状が続いている間は実施してよいとされています。HRTの主な副作用としては、性器出血、乳房痛・乳房緊張感、嘔吐(おうと)などの消化器症状、頭痛などがあります。またHRTのリスクとして乳がん、子宮内膜がんの発生率が高くなりますし、血栓を作りやすくすることも知られています。

 ご質問のHRTで高血圧を治療できるかですが、多くの研究結果から得られたHRTのガイドラインで、女性ホルモンによる降圧効果はとても弱いので、HRTを降圧目的で高血圧患者に施行すべきではないとの結論が出ています。

 高血圧発症のリスク因子として、年齢、男性、飲酒、肥満、高インスリン血症が挙げられております。年齢と性別はどうしようもないものですが、そのほかの因子は自分でコントロールできます。本当に高血圧かどうか、家庭で血圧を測定することが重要です。上腕で測定する血圧計を買って、毎朝血圧を測定、記録してください。

 薬物療法を行う前に生活習慣を見直してみましょう。塩分は1日6g以下にしましょう。野菜を多くしたバランスの良い食事、肥満の解消、毎日30分以上の運動、アルコールの制限(ビールで500mlまで)、禁煙などが重要です。

 薬をきちんと服用しているのに、血圧がなかなかコントロールされないような場合や、急に高血圧になった場合、あるいは薬で急激に血圧が下がる場合などには、別の病気(二次性高血圧)を除外する必要があります。

 また、糖尿病、脳血管疾患、狭心症、腎臓病などの高血圧の治療に大きな影響を与える合併症の有無を検査した上で降圧剤の種類が選択されますので、循環器科か内科への受診をお勧めします。

徳島新聞2008年12月7日号より転載

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