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【質問】 体重は標準、でも身長が・・・

 5歳の娘に関する質問です。出生直後からこれまでずっと、母子健康手帳にある成長曲線に入るか入らないかという低身長です。体重は標準なのですが、近所に住む同世代の子どもと比べても随分小さく、何か異常があるのではないかと心配しています。こういった低身長に病気の可能性はあるのでしょうか。



【答え】 低身長 -伸びが悪い場合は受診を-

阿南共栄病院 小児科診療部長 上田 隆

 かわいいわが子が小学校に入学するころになると、親としては、ほかの子どもたちより身長が低くないか気になります。治療法があれば、人並みに大きくしてやりたいと思うでしょう。

 病気が存在すれば身長を伸ばす治療があります。しかし、体質性や思春期が標準より遅いといったいわゆる「おくて」のような、病気ではない低身長は治療によって伸ばすことができません。

 1年間の身長の伸びが4cm以下の場合は、病気が隠されていることがあります。小学校に上がる前から身長の伸びが極端に悪い場合、「成長ホルモン分泌不全症」というまれな病気が疑われます。突然に身長の伸びが悪くなった場合は、「甲状腺機能低下症」や「脳腫瘍(しゅよう)」が見つかることもあります。

 また、ストレスが強いと身長が伸びなくなることもあります。転校を繰り返している子どもが、転校した最初の半年は伸びが悪いと訴えてきます。虐待によって親の愛が受けられなくなると身長の伸びが止まる「愛情遮断性小人症」もあり、胸がつまります。

 あなたのお子さまの身長は成長曲線のぎりぎりということですが、今までの経験では、そのような場合は内分泌の検査をしても異常はみられません。1年間の身長の伸びが4cm以下の場合や急に身長の伸びが悪くなった場合は、小児科の先生に相談することをお勧めします。

 小児科では、低身長外来を設けているところもあります。あらかじめ電話をしてから受診してください。受診の際には、お子さんの母子手帳と身長・体重の記録を持参してくだされば、低身長の診断に役に立ちます。病気ではないことが分かるだけでも安心できますよ。

 親が、自分自身の低身長の苦しみを持っている場合に、子どもには同じ苦しみを味わせたくないと、当院の低身長外来へ相談に来られます。検査の結果、病気ではないと分かれば次のようにお話しさせていただきます。

 「病気でなくて良かったですね。よく遊び、よく食べて、よく寝ると成長ホルモンがたくさん出ますよ。あとはどこまで大きくなるか楽しみに待ちましょう。お父さん、お母さんの身長に対するコンプレックスを子どもに伝えると、将来、お子さんが低身長のまま終わったとき、同じ恨み心を持つようになります。お母さんは身長が低いけれど、こんな素晴らしいお父さんと結婚し、かわいいお前が生まれたんだよ。人間にとって一番大事なのは『大きなからだ』ではなく『優しく大きな心』なんだよと伝えてくださいね」。

徳島新聞2008年11月30日号より転載

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