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【質問】 股関節おかしく動きにくい

 50代の女性です。5年ほど前からたまに、右の股(こ)関節(右足の付け根)がおかしいなと思うことがあり、受診した病院で「先天的に、丸い股関節が横に細長くとげのように出たところがある。先で手術して人工の物を足すようにすればいいのでは」との説明を受けました。飲食店での立ち仕事を続けていますが、階段もゆっくりにしか上り下りできないときがあり、しゃきしゃき歩いたり走ったりすると動きにくく、最近は、右膝(ひざ)も痛いと感じるときがあります。仕事を続けたいのですが、体力のあるうちに手術を受けた方がいいのでしょうか。



【答え】 変形性股関節症 -まずリハビリや減量を-

松永病院 松永 厚美(徳島市庄町)

 受診した病院の医師は「『臼蓋(きゅうがい)形成不全症』(股関節で大腿(だいたい)骨とかみあっている骨盤部分が変形している状態)による『変形性股関節症』」と診断し、「今はまだ人工股関節全置換術の時期ではない」との判断で「先で手術して」と説明されたのだと思います。

 人工股関節全置換術は、股関節のかみあっている骨盤側(臼蓋)と大腿骨側の部分を人工の物に換えることで、傷んだ関節を再建する手術です。変形性股関節症の患者のうち<1>股関節の壊れ方の程度が強い<2>自分の骨や関節を使った手術では治すことが難しい<3>痛みが強く日常生活に支障をきたす-人に行います。

 人工股関節の長所は、関節にとって大切な▽痛くない▽動く▽体重を支える-の3要素が保てること。手術効果が確実で、治療期間も他の手術法(骨切り術など)に比べて短く、2カ月程度の入院で済みます。

 逆に短所は▽緩みが生じることがある▽脱臼(だっきゅう)する危険がある▽細菌感染に弱い▽磨耗する-こと。ただ、使い方によって違いますが、7割以上が20-30年以上は機能を保っているようです。

 質問者のような働き盛りの50代で仕事を続けたいという人には、まず、リハビリや生活指導、サポーター、痛み止めを使う治療を徹底して行います。この時期に、自分の骨や関節を使った手術を勧めることもあります。

 立つ、歩く、座る、走る、段差を上るなど下肢の使い方や体重のコントロール、筋力トレーニングに人一倍気を使って生活することは、手術した場合も含め非常に重要です。しゃきしゃき歩いたり走ったり方向転換をしたりすると、膝関節を含めた下肢の運動軸がぶれて股関節をより痛めることがあるので、なるべく避け、普段から歩幅を大きめにとって外またで動く癖をつけましょう。

 また、いすに腰掛けて足を組んだり、しゃがむ姿勢を長時間続けたりするのはやめましょう。長時間立っているときは直立不動ではなく、肩幅ぐらいに足を開いて両膝をわずかに曲げた姿勢で立ち、腰・骨盤・膝で調子をとりながら、常に重心を移動させながら立つ癖をつけましょう。

 自転車はまたがって両つま先がつく程度の高さにサドルを調整することが大事です。そして、またがってからこぎ始め、降りるときにはゆっくりと注意深く足を着地させましょう。

 1キロの減量で股関節に対する負担を3-5キロ減らせます。負担が減れば痛みが減り、将来人工関節に変わっても有効です。肥満傾向にあるなら、より真剣に減量に取り組んでほしいものです。この際、運動だけでやせるのは関節にとって好ましくないので、食生活全般を見直し、摂取カロリーを減らしましょう。

 こうして書くのは簡単ですが、やせることは肥満傾向のある人にとっては難しいこと。一人で悩まずに医療機関で栄養・運動・生活指導を受けましょう。水中運動も効用の高い運動療法なので、医療機関で指導を受けて始めるとよいでしょう。

徳島新聞2008年7月20日号より転載

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