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【質問】 「血が薄い」と献血断られた

 23歳の女性です。先日、献血をしようとしたら「血が薄いのでまた次回お願いします」と断られました。睡眠不足が続いていたのが原因だと軽く考えていたのですが、ある雑誌で、若い女性に貧血が多いという記事を見つけました。私自身、暑さに弱く、すぐめまいやどうきがするのですが、貧血のせいなのでしょうか。もし貧血であれば、食事に気を付けるだけで治るのでしょうか。



【答え】 鉄欠乏性貧血 -ビタミン・ミネラル補給を-

徳島県赤十字血液センター 所長 小阪 昌明(徳島市庄町)

 赤血球中のヘモグロビン(Hb)の濃度が女性で12g/dl以下、男性で13g/dl以下だと貧血とみなされます。法律で「採血が健康上有害とされる貧血者から採血してはならない」と規定されており、相談された方は濃度が低かったために、献血をお断りしたものと思われます。

 ヘモグロビンは、鉄とたんぱくからできており、全身に酸素を供給する重要な働きをしています。貧血は、ヘモグロビンが少ない状態で酸素を運搬しているために、体内が低酸素になる状態です。何となく気だるい、気が進まない、活力がない、集中力が低下する、眠気やめまいが起こるといった症状があります。ただし、貧血が徐々に進行してきた場合は、ひどくならないと症状を自覚できないようです。

 成人男性が食事から吸収する鉄の量は1日約1ミリグラムで、毎日同量の鉄が汗、尿、便などとともに体外に失われるのを補給しています。成人女性は月経による出血があるため鉄の喪失が男性より多く、吸収すべき鉄の量は1日1.5-2.5ミリグラムになります。鉄は食事の含有量の10分の1程度しか吸収されないので、食事中の鉄の所要量は成人男性で1日10ミリグラム、生理のある12-50歳の女性では1日15ミリグラムとされています。

 鉄は肝臓やひ臓にも貯蔵されています。しかし、鉄の需要や喪失に供給が追いつかない状態が続くと、肝臓やひ臓に貯蔵されている鉄もなくなって、鉄欠乏、さらには小球性低色素性貧血(小さくて、ヘモグロビンの少ない赤血球)になってしまいます。

 国の国民健康・栄養調査によると、1999年度までは国民1人1日当たり10ミリグラム以上の鉄の摂取がありましたが、2001年度以降は8ミリグラムと減少しています。年齢別の鉄摂取量をみても、ほとんどの年齢において所要量に満たず、学童期から30代までの女性の鉄摂取量は7ミリグラム程度と、かなり少ない状況です。

 また、20代から50代までの男性は貧血の割合が5%以下であるのに対し、同年代女性の貧血の割合は25-30%を超えつつあります。背景にはダイエットや生活習慣、食生活の変化などによる鉄摂取量の減少が起こっていると考えられます。

 鉄欠乏や、鉄欠乏性の貧血の改善には鉄の多い食品や吸収を助けてくれる食品を取ることが不可欠です。肉類や赤身の魚に含まれる鉄はヘム鉄で、吸収率が約20%と高いのが特徴。一方、大豆や野菜などの植物性食品に含まれる鉄は吸収されにくく、吸収率は2-5%にすぎません。

 鉄の吸収を高めるためには、動物性たんぱく質やビタミンCを一緒に取ると効果的です。十分な鉄が補給されれば2~3カ月後には貧血は改善されるはずですが、貯蔵されている鉄の補充まで考えると、日常の食習慣で意識的にビタミンやミネラルを補給できるよう意識する必要があるでしょう。

徳島新聞2008年4月27日号より転載

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