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【質問】 子宮検診で「3a」と診断された

 35歳の女性です。子宮頸部(けいぶ)がんで、「3a」の段階にあると診断されました。内視鏡検査を行ったところ、悪化の兆候は認められませんでしたが、しばらく経過をみる必要があるといわれました。今後、よくなるのでしょうか。出産へのリスクはあるのでしょうか。子ども(胎児)の発育などに悪影響はないのでしょうか。今、妊娠はしていません。



【答え】 子宮頸部がん -前がん状態、半数自然治癒-

徳島大学病院 産婦人科 西村 正人

 子宮頸部がんで3aとのことですが、細胞診で3aと診断されたのではないかと思います。子宮頸部がんの進行期を示す場合に3a期と表現することがあるので、よく間違われます。

 細胞診での3aは、「子宮頸部異形成の疑いがあるので詳しく検査をしましょう」との意味です。異形成は子宮頸部の正常な細胞ががんになる前の、いわば前がん状態です。

 前がん状態といっても異形成のすべてががんになるわけではありません。異形成には3段階あり、程度の軽い方から軽度、中等度、高度に分かれています。

 軽度異形成では、50%程度が無治療で自然に治ります。中等度、高度の両異形成でもすべてががんになるわけではなく、進行するのは10%程度とされています。このため異形成と診断された場合、経過をみるのが一般的です。

 細胞診で3aと診断されても、炎症などが原因で、異形成とは関係ない場合もあります。これを調べる検査がコルポスコピーで、子宮頸部を拡大して異常の有無を調べ、異常があれば組織検査を行います。組織検査は一瞬で終わり、それほど痛みもないので安心してください。

 子宮頸部がんは、ヒトパピローマウイルスが子宮頸部の細胞に感染することから始まります。多くの女性は知らない間にこのウイルスに感染するといわれていますが、感染しても特に症状もなく、自然に治ることがほとんどです。ウイルスが排除されない場合、異形成に変化することが多く、その後さまざまな異常が積み重なってがんに変化していくといわれています。ただし、軽度異形成から、がんになるまでに5-10年と長い期間が必要です。

 異形成の段階で発見されると、治療が必要になっても小さな処置で治癒が可能です。レーザーで病変部を焼く治療(レーザー蒸散)でほぼ治癒します。

 ところで、妊娠中にヒトパピローマウイルスに感染したり異形成になったりしても、胎児の発育には影響がありません。妊娠中の約十カ月間で急に症状が悪化することもないので、細胞診を行いながら様子をみることになります。

 また、異形成の状態で妊娠しても問題ありません。通常、妊娠中に何らかの治療をすることはありません。異形成から上皮内がんまでの状態であれば、帝王切開は不要で普通の分娩(ぶんべん)が可能です。出産後に再び細胞診や組織検査を行い、必要なら治療を行います。

 最近、ヒトパピローマウイルスのワクチンが開発されました。欧米では既に使われており、異形成の予防効果も示されています。ただ、このワクチンはウイルスに感染しないよう予防するためのもので、感染したウイルスや、異形成、子宮頸部がんを治すためのものではありません。日本ではまだ使えないので、やはり定期的に子宮頸部がんの検診を受けることが大切です。

徳島新聞2008年3月9日号より転載

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