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【質問】 生理がだらだらと続く

 48歳女性です。毎年、子宮癌(がん)検診を受けていますが最近、生理が2週間ほどだらだらと続くことがあります。3年ほど前の検診で子宮体癌の再検査となり、結果は何らかの細胞が壊死(えし)した跡があるといわれました。半年後の検査でも異常なしだったのですが、更年期に入るとホルモンのバランスも崩れやすくなり、閉経したら子宮体癌になりやすくなると聞いています。発症しにくくするにはどうしたらよいのでしょうか。それと、先日の健康相談室で、乳癌についての答えに「微細石灰化陰影といって癌細胞が増殖した結果、起こる壊死(えし)物質をとらえることで、しこりを作る前段階の乳癌を発見できる」とありましたが、細胞の壊死というのは、子宮体癌の場合でも癌の前段階にあてはまるのでしょうか。



【答え】 子宮体癌 -出血続くなら精密検査を-

健康保険鳴門病院 産婦人科 鎌田 正晴

 子宮体癌は、若い女性にも多い子宮頸(けい)癌(子宮の入り口にできる癌)と異なり、40代後半から増加、閉経後の50~60代に最も多く見つかります。近年増加傾向にあり、全子宮癌に占める割合も1970年ごろは10%だったのが、2005年の調査では47%とほぼ欧米並みになっています。これは食生活の欧米化、すなわち高脂肪、高タンパク食の影響と指摘されています。

 子宮体癌は、月経を起こす子宮内膜に発生する癌です。子宮内膜は卵巣から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)という女性ホルモンにより刺激されて厚くなります。通常は排卵が起き、もう一つの女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることでエストロゲンの作用が中和され、月経として子宮外に排出されます。子宮内膜に癌ができてもきちんと月経が起こっている女性だと、はがれてなくなってしまうと考えれば分かりやすいと思います。つまり内膜を刺激するエストロゲンが多かったり、その刺激を中和する黄体ホルモンが少なすぎたりした場合に、子宮体癌が発生しやすくなります。

 妊娠中は大量の黄体ホルモンが胎盤から作られ、10カ月間、子宮内膜を保護します。出産経験のない女性は子宮体癌のリスクが高いといえます。月経不順の女性は相対的な黄体ホルモンの欠乏状態と考えられます。脂肪組織は副腎(じん)皮質でできる男性ホルモンからエストロゲンをつくるので、肥満女性はエストロゲン過剰状態となります。

 つまり▽子どもを産む▽月経不順のある場合は、きちんとホルモン治療をする(経口避妊薬や、更年期障害の治療として行われているホルモン補充療法は子宮体癌のリスクを半分以下にします)▽肥満、高血圧、糖尿病にならないよう気をつける-ことが子宮体癌の発症を防ぐ方法です。

 症状がないまま進行することの多い子宮頸癌に対し、子宮体癌では比較的早期に出血がみられます。そのため、厚労省の癌検診指針で子宮体癌検診の対象は、最近6カ月以内の<1>不正性器出血(一過性の少量の出血、閉経後出血など)<2>月経異常(過多月経、不規則月経など)<3>褐色帯下(おりもの)-のいずれかの症状が出ている人とされています。相談者は<2>に該当していますので、子宮体癌検診を受けたことは正しい選択でした。

 子宮体癌検診では一次検診として子宮内膜の細胞診を行います。判定結果が「疑陽性」「陽性」となった場合に精査が必要となり、内膜の組織診、場合によっては子宮鏡検査で診断しす。注意しなければならないのは子宮体癌の細胞診では10-20%の見落としがあることです。細胞診で「陰性」と判定されても出血などの症状が続くようであれば、再検査あるいは精密検査が必要です。その際、超音波検査で子宮内膜の状態を観察することが有力な手段となりますので、合わせて検査を受けることをお勧めします。

 乳癌検診ではマンモグラフィーが用いられ、特に石灰化の検出に威力を発揮しています。乳管内に増殖したがんの壊死組織には、特徴的な形態を示す石灰化が認められることがあり、微細石灰化陰影として乳管の外でしこりを作る前に発見することも可能です。ただ子宮内膜の場合、月経や炎症など腫瘍(しゅよう)と関係のない細胞の壊死もあるため、相談者が心配しているような壊死が見つかったからすぐ子宮体癌あるいは癌の前段階を疑うということではありません。

徳島新聞2007年10月28日号より転載

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