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【質問】 おしり・足が痛く歩けない

 73歳女性です。おしりから太もも、ひざ下にかけて痛みだし、けいれんを起こして歩くことができなくなりました。整形外科を受診したら、飲み薬と座薬をくれました。けいれんは3~4日で治まりましたが、おしりから下の痛みは取れません。痛みは左半分の腰から下です。最初は、6時間ごとといわれた座薬を待ちかねて入れていましたが、今は1日2回くらいでよくなりました。毎日ほとんど横になって何もしていませんが、少し痛くとも動く方がよいのでしょうか。また、これから先はどんな過ごし方をすればよいでしょうか。特に夜は、痛むおしりや足を上にしたり横にしたりと困っています。



【答え】 坐骨神経痛 -原因調査へ精密検査を-

板東整形外科 板東 和寿(板野郡藍住町東中富)

 実際に診察していないので、予測の範囲で回答します。症状のキーワードは左のおしりからひざ下までの片側下肢の痛み、急性期のけいれん、歩行困難です。これらから、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の可能性が高いと思われます。

 腰椎(ようつい)(いわゆる腰の骨)の中の脊柱管(せきちゅうかん)というトンネルの中に、脳から続く脊髄(せきずい)という大きな神経が通っていて、その末端に馬尾(ばび)と呼ばれる神経があります。そこから神経根という枝が分枝して、足を動かしたり痛いと感じたりする神経が出ています。

 この神経の枝が集まって坐骨神経となり、梨状筋(りじょうきん)というおしりの筋肉の下を通って下肢へ分布しています。神経根が何らかの原因で圧迫されると、片側下肢の痛みやしびれが出てきますが、これを根性(こんせい)坐骨神経痛といいます。

 根性坐骨神経痛の症状を引き起こす病気として、椎間板(ついかんばん)が脊柱管内に突出して神経を圧迫する腰椎(ようつい)椎間板ヘルニア、骨の変形により神経の周りの靭帯(じんたい)が厚くなって神経を圧迫する腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)、加齢性変化から腰骨が前に滑り神経を圧迫する腰椎滑り症などがあります。

 また、根性以外の坐骨神経痛を引き起こす疾患として、腰椎から出た坐骨神経が梨状筋で圧迫を受けて症状が出る梨状筋(りじょうきん)症候群や、ウイルス感染が原因となって発症する神経痛もあります。

 このほか、馬尾神経腫瘍(しゅよう)や転移性骨腫瘍などの腫瘍性疾患、化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)や脊椎結核といった炎症性疾患などもまれに原因となります。

 主に腰椎疾患が原因の下肢痛であれば、自然経過や内服などで症状が改善すれば、少しずつ運動を行っていけばよいと思います。ただ、その場合でも腰にかかる負担を減らすために、重量物を持ち上げることや長時間の座位を避けることは大事ですし、場合によってはコルセットの着用も有効でしょう。

 しかし、受診後1~2週間たっても強い下肢痛で歩行困難が続いたり、足の筋力低下や排尿障害などのまひ症状が出てきたら、再度、整形外科を受診してください。そして原因疾患が分かっているなら、病状の説明や細かな日常生活の指導を受けましょう。

 場合によっては運動療法も効果的でしょう。原因疾患がはっきり分かっていないのなら、MRIなどの精密検査を受けた方がよいと思います。結果によっては手術治療などを受けることもあります。

 質問に対して正確な答えではないと思いますが、原因疾患やその程度がはっきり分からない状態では、どこまで動いてよいか、今後の過ごし方について明確な回答は困難です。整形外科疾患に関しては、医師も初診時に今後の経過や治療方針をすべて判断できないことも多く、何度も診察して初めて治療方針がはっきりすることも少なくありません。従って病状の説明や生活上の注意点、他の治療方法の有無など自分の知りたいことは根気強く何度も医師に相談し、病気を理解した上で治療に臨んでいただきたいと思います。

徳島新聞2007年10月14日号より転載

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