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【質問】 気分晴れずやる気出ない

 38歳男性です。事務関係の仕事をしています。仕事に対する意欲が急になくなり、気持ちがゆううつな状態になってしまうことがあります。今までに出勤したくないと思うことが何度かあり、たまに欠勤することがありました。それがきっかけとなって、最近、ずるずると会社を休んでしまう傾向にあります。仕事だけではなく、何をするにもやる気が出ず、食欲もなくなり夜も眠れなくなりがち。季節のせいと思ったりするのですが、気分も晴れず、すっきりしません。こんな状態は病気なのでしょうか。



【答え】 うつ病 -症状認識し薬物療法を-

やまぐちメンタルクリニック 院長 山口 浩資(徳島市寺島本町東3丁目)

 正真正銘のうつ病です。身体の病気と同様に、うつ病にも重症の度合いがあります。最も軽いのは、「自分はうつ病だと思います。仕事もつらいし、一人前の仕事ができず会社に迷惑をかけています。遊んでも楽しくないし、何といっても家族で夕食というときに、笑顔でおいしいと言えない。情けない話です」と説明できる人です。

 仕事が十分できていないという厳しい現実を自ら認め、遊んだり、家族と夕食を楽しんだりできないといけないとの認識を持ち、日常のさまつな出来事に対する関心があります。

 次に、中等度のうつ病の人はこう言います。「自分は仕事で追い込まれ、疲れ果てていると思います。責任があるので、なんとか仕事はこなしていますが、このままではミスをしてしまうかもしれません。家庭にも特に問題はありません。自分はうつ病なのでしょうか」。

 中等度の人は、疲労感もあり、うつ病かもしれないと感じていますが、家庭のことを思いやるゆとりはありません。仕事でも、すでにトラブルは起きているにもかかわらず、それを認める勇気がない精神状態といえるでしょう。

 そして、重症のうつ病の人は次のように言います。「私は病気ではありません。仕事も順調ですし、家庭も円満です。ただ、眠れないだけなので、眠れる薬さえ頂ければ十分です」。自分の苦しい状況を認めようとせず、うつ病扱いされてはかなわないと初めから予防線を張っています。眠り薬以外は飲みたくないし、うつ病といわれても自分は信じませんと言わんばかりです。

 以上、うつ病の症状の程度を説明してみました。いかがでしょう。結局は、自分がうつ病であることを認められるかどうかが重要だと思います。自分が惨めになっている、自分がダメになっている、本当は気づいているけど認めたくない。認めることができたら軽症で、認めることができなければ重症です。

 今回の相談内容ですが、残念ながら身体の症状が中心となっています。仕事上の問題点は軽めに評価し、身体の症状は大きな問題と思いたいという感情が見え隠れします。ここは一番、勇気を出して「自分はうつ病だと思います。仕事もほとんどできていないし、このままではクビになってもおかしくありません。うつ病の治療をお願いします」と言いましょう。このセリフがよどみなく言えたなら、うつ病は半分治ったも同然です。

 最後に、治療についてお話しましょう。治療は薬物療法に始まり、薬物療法に終わります。とにかく薬を毎日服薬できない人は治りようがありません。少しくらい元気が出てきたとしても、服薬は続ける必要があります。

 そして、服薬を中止して治療終了とするのはゆっくりでいいでしょう。目安としては、元気に仕事ができて、元気に遊べて、みんなと仲良くできるようになるころ、1年が目安です。いくら仕事がバリバリできていても、友人もいないし家族と話もしないという人はやはりうつ病です。

徳島新聞2007年9月16日号より転載

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