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【質問】 不妊治療休み生理こず

 30代の女性です。17歳のときに卵巣嚢腫(のうしゅ)で片方の卵巣の一部を失いました。22歳のときにも同じ病気になり、前に手術した側の卵巣すべてと、もう片方の卵巣の一部を失いました。25歳で結婚し、婦人科で不妊治療(体外受精)をすることになりました。卵子を作るための注射は通常の倍の量の薬剤を使ったのですが、うまくいきませんでした。4回失敗を繰り返し、経済的理由もあって今は治療を休んでいますが、2年前の4回目の治療後から生理がこなくなりました。病院にも行きづらく、このままでは卵巣機能がだめになってしまうのではないかと心配です。2年前の治療前のがん検診では異常はありませんでした。どうすればいいのでしょうか。



【答え】 卵巣嚢腫 -排卵誘発剤投与再開を-

中山産婦人科 中山 孝善(板野郡藍住町東中富)

 卵巣嚢腫のために2回の手術をされていますので、それが原因で卵巣の働きが悪くなり、無月経になっているものと考えられます。

 排卵は、胎児期から卵巣に存在する原始卵胞が脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの働きにより、成熟卵胞に発育することで起こります。原始卵胞数には限りがありますので、これが枯渇してくると排卵が起こらず、無月経となります。これを閉経といいますが、通常これは40歳以降になります。

 ご相談の方は、卵巣にできた腫瘍(しゅよう)による圧迫などから、原始卵胞が年齢以上に少なくなっている状態と考えられます。そのために自分自身が産生する卵胞刺激ホルモンの量では排卵できず、若年にもかかわらず無月経になっているものと考えられます。

 排卵しないと、妊娠は不可能になります。ご相談の方は、体外受精時に比較的大量の排卵誘発剤の投与が必要だったようですが、今後、排卵誘発剤に対する卵巣の反応がさらに悪くなってしまうことが危ぐされます。できるだけ早く治療を再開される方がよいと思います。

 体外受精では高額の治療費が負担になりますが、患者の方に朗報があります。昨年度までは年10万円までだった県の助成金が、本年度から年20万円までと増額されました。また、阿南市在住の方は、市のバックアップで年20万円までの追加助成金が支給されます。積極的に利用してください。

 未婚の方で排卵が起こりにくくなっている人、あるいは卵巣がんなどのために卵巣をすべて取らなければならない人がいます。これまでは結婚されたときに排卵しない状態になっていれば、子供をあきらめざるを得ませんでした。受精卵という、精子と融合した状態の卵しか凍結保存ができなかったからです。

 しかし最近、精子が融合していない未受精卵を凍結保存し、将来の妊娠に備える研究が進んでいます。この方法だと、結婚前に凍結保存しておいた未受精卵を結婚後に使って、子供をつくることができます。ご心配の方は、不妊治療を専門に行っている施設にお問い合わせください。詳細を教えてもらえます。

 がん検診で異常はなかったとのことですが、それは多分、子宮がん検診のことだと思います。ただ、子宮がんは、今回の卵巣の働きの異常とは直接の関係はありません。卵巣の腫瘍についてですが、卵巣がん検診は子宮がん検診ほど確実な調査方法ではありません。しかし、ご相談の方は手術をされていますので、手術時に卵巣から直接採取した組織を調べて悪性でないことが確認されているはずです。

徳島新聞2007年5月6日号より転載

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