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【質問】 「肘がおかしい」と言う息子

 14歳の息子は、小学生のころから野球をしています。ピッチャーですが「何となく肘(ひじ)がおかしい」と言うようになりました。引っ張られるような感じがするようです。骨が成長しているのかな、とも思うのですが、練習が厳しいのか痛むときもあるようです。痛みがひどいときは休むように勧めています。でも、どうしても頑張ってしまうようです。日常生活では支障はありません。このまま続けさせていいものかどうか迷っています。大人になって後遺症が出たりしないでしょうか。



【答え】 野球肘 -整形外科で受診・治療を-

徳島大学病院 整形外科 松浦 哲也

 「野球肘」についての質問のようです。野球、特に投げる動作により、肘には普段の生活ではかかることのないような大きなストレスが加わり、これが度重なると傷がつきます。

 傷つく場所は年齢、特に骨の年齢によって異なります。骨の成長が終了する15歳くらいまでは成長途中の骨や軟骨、それ以降では筋肉や腱(けん)、靭帯(じんたい)が痛みやすい特徴があります。

 息子さんは14歳ですので、骨や軟骨の障害が疑われます。骨、軟骨の障害は部位により内側、外側、後方に分けることができます。手のひらを天井に向けて小指側が内側、親指側が外側になります。

 最も多いのは内上顆(ないじょうか)障害といわれる内側の障害で、障害全体の90%以上を占めます。次いで外側の小頭(しょうとう)障害、最も少ないのが後方の肘頭(ちゅうとう)障害です。このうち数は少ないのですが、将来的に後遺症を残しやすいのは小頭障害で、離断性骨軟骨炎とも呼ばれています。ここでは小頭障害について説明します。

 小頭障害は、レントゲンで透明に抜けたように見える初期から、小さな骨の見える進行期を経て、「ネズミ」といわれる遊離体を形成する終末期へと進行します〈図参照〉。平均年齢でみた場合、初期は11.4歳、進行期は14.0歳、終末期は15.3歳になります。

 症状としては、痛みや曲げ伸ばしの左右差などがあります。質問にある「引っ張られる感じ」は、曲げ伸ばしの制限により生じているものかもしれません。終末期には、はっきりとした痛みがあり、洗顔や食事動作にも支障があります。初期や進行期は症状が軽く、数日で無くなるのが特徴で、早期に診断して治療を開始することが最も大切です。

 診断にはレントゲン検査が必要です。問診や診察だけでは分からないので、専門である整形外科を受診しなければなりません。

 治療は初期、進行期では投球中止を主体とした保存療法を行います。実際には投球やバッティングはもちろん、かばんを持つなどの重量物保持も禁止し、食事と書字動作のみを許可します。これにより、初期の90%、進行期の50%が治ります。

 症状が無くても、レントゲンで治ったことが確認できるまでは保存療法を続ける必要があります。治るまでには平均1年を要しますが、一度治れば元のレベルへの復帰が可能となり、再発することもありません。

 しかし、終末期では保存療法で治ることはなく、手術が必要になります。最近は内視鏡手術が進歩して小さな傷口で処置できるようになり、術後の痛みも少ないのですが、保存療法で治った例に比べると成績は劣ります。

 早期発見、早期治療に勝るものはないので、少なくとも1年に1回は整形外科でのレントゲンチェックが必要です。さらに重要なことは予防であり、小学生では1日50球、1週間で200球以内、中学生では1日70球、1週間で350球以内の投球数が適当と思われます。

徳島新聞2007年4月8日号より転載

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