徳島県医師会 トップページへ

  • 文字サイズ標準
  • 文字サイズ拡大
文字サイズ変更について
県民の皆さまへ

【質問】 閉経3年後に生理が再開

 57歳の女性です。54歳のときに閉経したものと思っていたのですが、それから3年たった今、生理になって戸惑っています。以前と同様、生理前に乳首の張りもあり、3日ほどで止まりましたが不安です。何か子宮の病気と関係があるのでしょうか。子宮がんなどの自覚症状を教えてください。特に更年期障害というほどのことはありません。



【答え】 不正出血 -悪性疾患を疑い検査を-

平尾レディースクリニック 平尾 務(徳島市西須賀町下中須)

閉経後不正出血の主な原因
1.器質的な疾患に関係した出血
   ア 子宮頸癌・体癌、腟癌などの
     悪性疾患
   イ 子宮筋腫・子宮内膜症
   ウ 頚管ポリープ・内膜ポリープ
   エ ホルモン産生卵巣腫瘍
2.ホルモンに関係した出血
   ア 萎縮性膣炎
   イ ホルモン剤の服用
   ウ イソフラボンなどの摂取
 まず気になることは、あなたが今回の出血を生理(正式には月経といいます)と思っていることです。実際に診療をしていて、患者が月経と思っていても、実は不正出血であることが度々あります。

 医学的には、最後の月経から1年間、月経がなければ閉経と判断します。あなたは「54歳でいったん閉経していたものが57歳で再開した」と思っているようですが、通常はこのようなことは非常にまれです。

 そこで私たち産婦人科医は、まず器質的疾患(子宮頸癌(けいがん)・体癌、腟(ちつ)癌、ホルモン産生卵巣腫瘍(しゅよう)、子宮筋腫、子宮内膜症、頚管(けいかん)ポリープ、内膜ポリープなど)を疑って検査を進めていきます。このうち、ホルモン産生卵巣腫瘍や子宮筋腫、子宮内膜症、頚管ポリープ、内膜ポリープなどは、内診や超音波検査などでほぼ診断が付きます。

 一番心配しなければいけないのは、子宮頸癌・体癌、腟癌などの悪性疾患による不正出血です。子宮頸癌は子宮の入り口にでき、体癌は子宮の奥の方にできます。また、非常に頻度は低いですが、腟癌やホルモン産生卵巣腫瘍も考慮しなければいけません。

 どの疾患も自覚症状として、不正出血が挙げられます。検査方法としては、子宮頸癌・体癌、腟癌に関しては細胞診を行います。体癌の細胞診は多少痛みを伴いますが、必要な検査なので必ず受けてください。

 そして、器質的な原因がなければ、初めてホルモンに関係した不正出血であると診断します。一番多く見られるのが、閉経前後に卵巣からのホルモンの分泌量が減少し、腟内の自浄作用が低下することによって起こる萎縮(いしゅく)性腟炎です。

 また、質問者は乳首の張りもあるようなので、内因性ホルモン分泌によるもの(月経の再開、ホルモン産生卵巣腫瘍)や、外因性ホルモンの摂取(ホルモン剤、イソフラボンなどホルモン作用のある食物)によるものも考えられるので、これらの鑑別を行います。

 私たち産婦人科医が心掛けていることは、悪性疾患を見逃さないということです。万が一、見逃してしまったときには、患者にとって非常に不幸な結果になります。特に子宮体癌に関しては、食生活の欧米化によって発生率が非常に高くなってきています。20-30代の若年性子宮体癌も時々経験します。

 不正出血がある場合は、薄茶色か鮮血かといった色、量、持続期間にかかわらず、産婦人科で検査を受けることが重要です。

徳島新聞2007年2月25日号より転載

© TOKUSHIMA MEDICAL ASSOCIATION.