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【質問】 生理前から腹痛や貧血

 35歳の女性です。生理前から生理中にかけて、ひどい腹痛(特に下腹部)と頭痛に悩まされます。以前から出血量も多いのですが、最近は貧血のような状態になるときがあります。疲れやすくなったのか、階段を上り下りする際などには息が切れてしまいます。インターネットで調べてみると、子宮筋腫に該当するような症状が多くあり、気になっています。病院で受診した方がいいのでしょうか。今まで婦人科健診も受けたことがないのでとても不安です。



【答え】 子宮筋腫 -内診・超音波検査で確認-

遠藤産婦人科 副院長 遠藤 聡子(名西郡石井町石井)

 月経量が多い(過多月経)ことやひどい月経痛(月経困難症)、貧血症状などから考えると、やはり子宮筋腫が疑われます。ぜひ産婦人科で診察を受けてもらいたいと思います。

 子宮筋腫は、子宮の筋肉にできたこぶのことです。できる場所によって大きく3つに分かれます。<1>子宮の一番外側を覆う膜の下にできる漿膜(しょうまく)下筋腫<2>子宮の筋肉内にできる筋層内筋腫<3>子宮内膜の下にできる粘膜下筋腫-です。粘膜下筋腫には、そこから茎が出たようにぶら下がり、膣(ちつ)の中に筋腫が見える有茎性筋腫もあります。

 多いのは筋層内筋腫です。筋腫が一つのこともあれば、いろいろな場所にできている場合もあります。筋腫が子宮の内側で大きくなっていくと、子宮内膜の面積が広くなり、月経量が増えます。過多月経の自覚がない人もいますが、月経血にレバーのような血の塊が多いとか、夜用の大きなナプキンを2~3時間で交換する必要がある日が多い場合などは注意が必要です。

 過多月経が続くと貧血になり、疲れやすくなり、階段を上るときの息切れや目まい、頭痛などが起きるようになります。筋腫が大きくなると、自分でおなかの上からしこりを触れることがあり、膀胱(ぼうこう)や腸が圧迫され、腰痛や頻尿、便秘の症状が表れる場合もあります。できた場所によっては不妊や流産の原因になることもあります。しかし、全く自覚症状がない人もいます。

 子宮筋腫ができる原因ははっきりしていませんが、女性ホルモンが深くかかわっていると考えられていて、閉経後は一般的に筋腫も小さくなります。

 子宮筋腫が疑われる場合、産婦人科では主に内診と超音波検査が行われます。内診では膣から直接、子宮を触って筋腫の有無を確認し、周辺臓器との関係を診察します。そして、超音波検査でどこにどのような筋腫ができているかを確認します。さらに詳細な検査としては、骨盤部のMRIを撮影したり、子宮鏡で子宮内腔を観察することもあります。

 子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、過多月経による貧血や月経時のひどい痛みが大変苦痛なので、その人に応じた治療が必要です。筋腫の大きさや数はもちろん、年齢や症状の程度、妊娠の希望などが大きくかかわってきます。

 治療には大きく分けて手術療法と薬物療法があります。手術療法は、子宮を全部取ってしまう場合と筋腫だけを取る場合があります。今後の妊娠を希望する人はなるべく筋腫だけを取るようにしますが、あまりに筋腫が大きい場合にはそれができないときがあります。

 薬物療法としては、女性ホルモンの産生・分泌を強力に抑えて閉経状態を作る方法があり、月に1回注射するか、点鼻薬で1日2~3回鼻から吸収させます。月経は停止し、筋腫もやや小さくなり、その間に貧血が改善しますが、更年期のような症状(のぼせ・いらいら・ほてりなど)や骨量の減少が見られることがあります。

 1回の治療期間は約6カ月ですが、小さくなった筋腫がしばらくすると、また大きくなることがあります。貧血改善のためには鉄剤(内服または注射)、痛みには鎮痛剤(内服または座薬)をそれぞれ使用しますが、貧血がいったん治っても月経後に元に戻ってしまう人や、ひどい痛みで日常生活に支障が出ている人には、手術を勧めることが多いです。早めに受診し、子宮筋腫があれば主治医とよく相談し、あなたに一番必要な治療を受けてください。

徳島新聞2007年1月7日号より転載

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