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【質問】 気分の晴れない状態続く

 33歳の女性です。20代後半から片頭痛や目まい、ふらつきがして、何となく体調が悪い状態が続いています。食欲もあるときとないときの差が激しく、ある時はいくら食べてもおなかがすくのですが、ない時はずっとむかむかしたり胃の働きが悪そうな感じがしたりして、ほとんど食べられません。体重の増減はなく、体調の良い時もあるので、そのうち良くなるだろうと思って病院には行っていません。でも、体調が良くなったり悪くなったりを繰り返しているので、どこか悪いのではないかと心配です。10年ほど前に仕事をやめてからは家にいることが多いのですが、そのせいか気分が晴れない状態が続いています。また、高校時代から赤面症で悩んでいて、今でも人と話をするときにはすごく緊張します。そんなことも関係あるのでしょうか。



【答え】 心の病気 -本質を見抜ける精神科医へ-

田岡東病院 真鍋 正広(徳島市城東町2丁目)

 10年余りに及ぶお悩み、お察しします。まず、周期的に良くなるために病院に行っていないとのことですが、もったいない数年間を過ごされたのではと思います。

 片頭痛や目まい、ふらつき…と並べば、大抵の医師は脳腫瘍やその他の疾患を疑います。胃腸の症状を聞けば、胃かいようや胃がんを疑います。就労していないストレスから、アルコールやたばこが増えていませんか。自己判断で他人の薬をもらって飲んでいませんか。

 内科や脳外科、耳鼻科などを回って精密検査をし、どこに行っても「異常がない」と言われたら、次が精神神経科・心療内科の出番です。精神科医だけが、心の病気の本質を見抜けるからです。心療内科は、心と密接に関連した身体疾患(心身症)を診る科です。

 高校時代からの赤面症や10年間の準ひきこもり状態、食行動の状況などから察するに、神経症、うつ病、摂食障害、それから統合失調症などの疾患の鑑別が必要と思います。内科や神経内科では、これらの心の病はしばしば見落とされます。

 10年ほど前に仕事を辞められた原因は何でしょうか。今でも人と話すときに起きる緊張感についても、もっと詳しく聞かせてもらえればと思います。精神科の患者を多く診たことのある精神科医や心療内科医だけが、あなたに正しい診断を下せるでしょう。

 初期の面接や心理テストによって、臨床心理士による心理カウンセリングがふさわしい人か、抗不安薬(一般の人が安定剤と思っている薬)がふさわしい人か、抗うつ薬がふさわしい人か、あるいは抗精神病薬がふさわしい人か、認知行動療法の適応か、などを判断できるのが精神科クリニック・精神科病院です。

 身体疾患の見落としが一番の不幸です。次に心配なのが、一般科で漫然と「自律神経失調症、心身症でしょう」といわれ、抗不安薬や抗うつ薬を処方され続けて社会復帰が遅れることです。

 精神科でなければ診断・治療できない摂食障害や解離(かいり)性障害、統合失調症などの見落としもよくあることです。精神科医は、患者の生活史の一連の流れから判断を下します。

 10年間、家にいることが多いという環境には問題がないでしょうか。ご家族との人間関係があなたの身体症状に影響していないでしょうか。

 精神科というと、ご家族に受診を反対されるかもしれません。しかし、患者の身体や心だけを診て治療する時代は終わりました。家庭や友人関係、職場での対人関係などを含めて総合的に判断し、最も適切なケアを行うべき時代になっています。

 思い切っての、順序だった通院をお勧めします。説明責任の果たせる医師を選んでください。

徳島新聞2006年11月5日号より転載

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