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【質問】 手足の指先に発疹や膿

 40代の女性です。手足の指先に小さな赤い発疹ができ、やがて膿(うみ)が出て皮膚がかぶれます。痛くもかゆくもありませんが、できては裂けるの繰り返しです。副腎皮質ホルモン(ステロイド)系の軟こうを塗っていますが、その場しのぎに過ぎず、副作用も心配です。根本的な治療法はないのでしょうか。



【答え】 掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう) -専門医で気長に治療-

宇都宮皮膚泌尿器科 宇都宮 正裕(徳島市吉野本町1丁目)

 ご質問からは、<1>いわゆるかぶれで、かゆみを伴う「接触皮膚炎」<2>多汗症の人に多く、ある季節がくると小さな水ぶくれが指の辺縁に出る「異汗性湿疹」<3>真菌(かび)によって起こり、顕微鏡でかびを確認できる、白癬(はくせん)(水虫)やカンジダなどの「真菌症」<4>手のひらや足の裏に膿が出る「掌蹠膿庖症」<5>手足の指先に膿が出て、つめの変形や指の腫れを伴う「けい留性肢端皮膚炎」-などが考えられます。

 まず、真菌検査で真菌がいなかったと仮定した場合、手足にできていることや膿が出て裂けることを繰り返していること、かゆみがないことを考えますと、掌蹠膿庖症ではないかと思います。

 掌蹠膿庖症は、掌蹠、つまり手のひらや足の裏に膿庖、つまり膿をもった水ぶくれができる慢性の病気です。手のひらや土踏まず、かかとなどに赤みをもった膿庖ができ、しばらくするとそれが裂けて茶色っぽいかさぶたになりますが、また膿庖ができるということを繰り返します。

 ご質問のように、手足の指先に出ることもしばしばあります。かゆみはあることもありますが、ないことの方が多いようです。

 次に、掌蹠膿庖症の原因についてですが、半分ぐらいが病巣感染といわれています。特に慢性の扁桃(へんとう)腺炎や虫歯が原因となることがあり、扁桃摘出や虫歯の治療が奏功する場合があるので、これらの病気がある場合は耳鼻科や歯科の専門医を受診する必要があります。

 また、金属アレルギーや喫煙が関与している場合もあり、歯科金属除去や禁煙が効果がある場合もあります。

 しかし、これらの原因が見つからない原因不明のことが多いことも確かです。こういう場合は対症療法が主となります。副腎皮質ホルモン軟こう、ビタミンD3軟こうなどの外用、長波長の紫外線を当てるPUVA療法、エトレチネートやビオチンなどの特殊なビタミンの内服などがありますが、これらの治療が効きにくいこともしばしばあります。

 このように掌蹠膿庖症は、良くなったり悪くなったりして慢性に経過しますが、数年たつと自然に治る場合も多くみられます。また、副腎皮質ホルモン軟こうの副作用については、長期の使用により皮膚が薄くなることがありますが、幸い手足の皮膚は比較的厚いので専門医のもとで使用すれば、まず問題にはならないと思います。

 掌蹠膿庖症は私たち皮膚科医にとって、てこずる病気ではありますが、決して治らない病気ではありません。あきらめずに頑張りましょう。

徳島新聞2006年10月8日号より転載

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