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【質問】 握力弱り指先しびれる

 36歳の女性です。3カ月ほど前から、両腕から指先にかけてとてもだるく、最近では時々手に持っている物を落としてしまいます。握力もかなり弱くなり、指先もしびれるときがあります。病院では、首のヘルニアといわれました。家でも首に負担をかけないよう枕をバスタオルに替え、首に筋肉をつける体操をしています。これ以上、症状が悪くならないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。



【答え】 頚椎ヘルニア -長時間の下向き姿勢避けて-

堀口整形外科 堀口 泰稔(板野郡北島町江尻)

 病院で、首のヘルニア(頚椎(けいつい)ヘルニア)と診断されて、いろいろな指導も受けられているようですね。重複するとは思いますが、概略を述べさせていただきます。

 ご存じの通り、首はその上に7キロ前後の重い頭を支え、動かしています。7個の頚椎とその間の椎間板(ついかんばん)で構成されています。その下は胸郭ですが、この部分は12個の胸椎からなり、そのおのおのから長い助骨を出して鎧(よろい)のような構造をしておりますので動きはほとんどありません。

 従って、日常生活における頭の動き(特に視線の動き)は、主として頚椎が動くことによって行われています。〈図〉のように、椎間板は前方にありますので、頭の重心が前に傾くことにより、圧力がかかるようになっています。


 この圧力が少しずつ椎間板を傷付け、長期間繰り返すことにより、ヘルニアになる人が出てきます。従って頚椎を保護するためには、日常生活で下方を見る姿勢を続けることをできるだけ避けるようにしてください。

 具体的には編み物、パソコン、草抜きなどはなるべくやめた方がよいと思います。また、新聞を読んだりテレビを見たりするときも、今までより高い視線になるようにしてください。なお、逆に反りかえるのは良くありません。水平より約10度下の視線が良いと思います。

 枕をバスタオルに替えたのもよいでしょう。なるべく低めの枕がよいと思います。頭よりは首の部分に当ててください。

 首に筋肉をつける体操をされているのもよいですね。ただし、あまり無理な姿勢になるものは避けた方がよいと思われます。

 病院で、頚椎牽引(けんいん)を受けるのもよいと思います。疼痛(とうつう)がある時期や急性期には逆に悪化したりしますが、3カ月ほど経過していますので軽めの牽引を続けるのがよいでしょう。

 内服、注射など薬物療法も、症状の強い時期には必要でしょう。十分に服用すれば治るというものではありませんので、調子が良くなれば休薬してください。

 首のヘルニアによって圧迫され障害を受ける神経は、脳の続きである中枢神経(脊髄(せきずい)神経)と末梢(まっしょう)神経です。(腰のヘルニアではほとんどが末梢神経)。

 中枢神経である脊髄は、障害を受けると回復力が弱く、圧迫症状がある程度以上進んだ場合、治る可能性が少なくなります。ある程度の障害が出てくれば、早めの手術が必要なこともあります。

 文面から推察しますと、末梢神経のみの症状のようですが、定期的に整形外科医の診断を受けながら、予防・治療を行ってください。

徳島新聞2006年6月18日号より転載

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