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【質問】 ふくらはぎなどに不快感

 40代の男性です。最近、新聞で「むずむず脚症候群」という病気があることを知りました。脚のふくらはぎなどに不快な感覚があって、眠れないというものらしいです。実は私も、最近同じような感覚に襲われました。どういう病気なのか、どこを受診すればよいのかなどを詳しく教えてください。



【答え】 むずむず脚症候群 -鉄分不足と密接な関係-

ゆうあいホスピタル 坂本 哲郎(三好郡東みよし町中庄)

 「むずむず脚症候群」とは、眠りにつこう(入眠期)とすると、下肢、特にふくらはぎや足の裏に「アリがはうよう感覚」や「むずむず感」「ほてり感」が起こるためになかなか寝付けず(入眠障害)、不眠症や日中の眠気の原因となる病気です。

 このむずむず感は、脚をじっとさせておくことができないほどの極めて不快なものです。脚を動かしたり、歩くと直ちに消失しますが、また眠ろうとすると出現するという厄介な病気です。

 入眠期に最も多くみられ、朝方にはあまりみられません。時には、日中に休んでいるときにもみられます。北欧では成人の5-10%にみられ、アジアではそれよりも少ないとされています。遺伝性についてはまだ十分には解明されていません。

 中年以降に発症しやすく、男性に比較して女性の方が1.5-2倍多いといわれています。身体的に重篤な障害となるものではありませんが、日常生活の質(QOL)を著しく低下させ、他人には計り知れないほどの苦痛を患者は感じています。特徴的な症状のため、診断は問診により比較的簡単にできますが、より確実な診断のためには終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要です。

 むずむず脚症候群には80-90%の高率で周期性四肢運動障害が合併するといわれています。周期性四肢運動障害とは、かつては睡眠時ミオクローヌス症候群といわれたものです。この病気は、睡眠中に下肢の筋肉が周期的に攣(つ)るために寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりしますが、下肢のけいれんに本人は気づいていないことがほとんどです。

 PSGでは前脛骨筋(ぜんけいこつきん)(いわゆる向こうずね、あるいは弁慶の泣き所)の筋電図に周期的な攣縮(れんしゅく)を認めます。むずむず脚症候群が疑われても、PSGで周期性四肢運動障害が否定されたときには、末しょう神経あるいは末しょう血管の障害を鑑別しなければいけません。抗精神病薬を服用している人では、副作用であるアカシジアを鑑別する必要があります。

 むずむず脚症候群は、鉄分の不足(鉄欠乏症)と密接に関係していることが分かっています。妊娠中の女性や腎不全の末期、あるいは人工透析中の患者にもよく合併するといわれています。したがって、むずむず脚症候群の患者ではこれらの合併症がないかをよく調べる必要があります。また、薬の副作用として出現することもあります。

 治療薬としては、てんかん発作に使うクロナゼパム(商品名・リボトリールあるいはランドセン)やベンゾジアゼピン系坑不安薬、ドーパミン製剤、ドーパミン作動薬(商品名・ドミン、ペルマックス、パーロデル)などがあります。

 ゆうあいホスピタルでは睡眠外来を開設し、睡眠検査室を完備しております。むずむず脚症候群のみならず、さまざまな睡眠障害(不眠や睡眠時の異常行動)あるいは覚せい障害(昼間の眠気)でお悩みの方は、ぜひ相談・受診においでください。

徳島新聞2006年5月7日号より転載

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