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【質問】 「飲む育毛剤」試したいが

 30代の男性です。最近、新聞で「飲む育毛剤」が発売されたという記事を読みました。「フィナステリド」という内服薬です。最近、薄毛で悩んでいるので試してみたい気持ちがあるのですが…。何科を受診すればいいのですか。また、どれくらいで効果があるのか、副作用などの心配はないのか、詳しく教えてください。



【答え】 男性型脱毛症 -進行を抑えるのが目的-

徳島県立中央病院 皮膚科 敷地 孝法(徳島市蔵本町1丁目)

 薄毛、いわゆる男性型脱毛症(AGA)で悩む男性は全国で約800万人いるといわれ、糖尿病患者数を上回るほどです。指摘のように最近、AGA患者さんのQOL(生活の質)を改善するためのいわゆる生活改善薬として“飲む育毛剤”の「フィナステリド(商品名プロペシア)」が発売され、注目を集めています。

 相談の内容に関連し、AGAの特徴と診断、AGAの原因、プロペシアの作用機序、実際の効果、服用に際しての注意、副作用について概説します。

 まずはAGAの特徴と診断についてですが、AGAは<1>多くは遺伝的素因を有する患者さんに生じ、<2>思春期以降に発症して放ってておけば徐々に進行し、<3>特有の脱毛パターン(額の生え際から後退していくタイプ、頭頂部から薄くなっていくタイプ、混合タイプなど)を示し、<4>硬毛が抜け落ちて軟毛(うぶ毛)に置き換わっていく-などの特徴があります。

 診断に際しては他の脱毛症(円形脱毛症、機械性脱毛症、薬剤性脱毛症など)と鑑別する必要がありますので、皮膚科を受診してください。ただ、この薬は保険適用外であるため、医療機関を受診する際には、まず取り扱いの有無や、治療費などを事前に電話で問い合わせることをお勧めします。

 次にAGAの原因ですが、AGAの脱毛部には男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が高濃度にみられ、これがヘアサイクルの成長期を短くすることによって硬毛を軟毛化し、薄毛を進行させることが一番の原因と考えられています。

 プロペシアはテストステロンという男性ホルモンをこのDHTに変換させる酵素(5α還元酵素)を阻害することによってDHTの産生を抑えます。

 実際に公表された国内でのプロペシア内服一年後の改善率(写真判定)は、0.2ミリグラムの錠剤で54%、1ミリグラムの錠剤では58%でした。海外での5年間の追跡調査(毛髪数測定)では、プロペシア内服群では投与前の毛髪数以上をずっとキープしていたものの、プラセボ(偽薬)投与群では毛髪数は減る一方でした。

 プロペシアを服用される際の注意事項ですが、まず治療の第一の目的は抜け毛の進行を抑えることと理解してください。飲めば髪の毛がフサフサ生えてくる魔法の薬ではありません(実際に生えてきた患者さんも多数いますが)。また効果判定には少なくとも6カ月を要するので、決められた用法・用量をしっかりと守って治療を継続することが大切です。なお、女性への適応はありませんので注意してください。

 最後に副作用の件です。概して他の一般薬と大差はなく、特に重篤な副作用が多いわけではありません。最も気になる性機能減退に関しては1年間の調査で、1ミリグラム投与群で2.9%、0.2ミリグラム投与群で1.5%で、プラセボ投与群の2.2%と有意差はありませんでした。

徳島新聞2006年2月12日号より転載

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