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【質問】 右脚にしびれを感じる

 60代の男性です。脚のしびれについて相談します。昨年7月ごろ、洗顔のために腰を曲げたときに右脚のふくらはぎの外側付近にしびれを感じました。トイレでいきんだときは尻(右側)もしびれ、畳の上にペタンと座るような姿勢は取りにくくなりました。また、いすに座ると、太ももの後ろ側や右脚の付け根付近に強い圧迫感を受けます。しばらく同じ姿勢でいた後で、歩き始めたときも脚にしびれを感じます。エックス線とMRIの検査では、腰椎(ようつい)の椎間板(ついかんばん)の厚みが狭くなることによる座骨神経痛とのことで、血液の流れをよくする薬を処方されましたが改善しません。その後、整骨院で筋がずれているのを直してもらったこともありましたが、時間の経過に伴ってしびれの出てくることが多くなりました。ただ、起床直前で身体が温まったときは症状がありません。このまま症状が悪化していくようで心配です。



【答え】 腰部脊椎管狭窄症 -適切な経過観察が必要-

ほりべ整形外科 堀部 和好(徳島市南昭和町1丁目)

 相談の内容から推察すると腰痛や脚のしびれは、今回ほどでなくても何回か経験しているように考えられます。その証拠はエックス線やMRIの検査に見られるようです。

 まず、腰椎椎間板症に伴う座骨神経痛が考えられます。椎間板ヘルニア様の症状が慢性化して知覚障害が残った状態が考えられるようですが、トイレ動作時のしびれ、その他の状況から腰部脊椎(せきつい)管狭窄(きょうさく)症の可能性もあります。

 この疾患は腰椎の後方にある脊椎管(ここでは一般に脊髄はなく腰部神経を入れた脊髄膜がある)が周辺の靭帯(じんたい)、椎間板などの構造物の圧迫や脊椎のすべり症などいくつかの原因で、この脊椎管を圧迫、狭窄することによって発生します。その状況を厳密に鑑別することは治療をするために必要ですが、文面だけでは判定困難と思います。

 症状、程度にはかなり異なる場合があると思います。先日手術した人気司会者、みのもんた氏も苦しんだようです。MRI検査をしているようですが、脊椎管の圧迫所見があるかどうか、その病院に再度行って聞くことを勧めます。診断上、かなり有力な証拠になると思います。

 腰部脊椎管狭窄症の代表的な症状は、歩行していると腰下肢痛が強くなって歩行を中止せざるを得ないが、休めば(特に腰掛けて前屈位の姿勢でいると)症状が軽くなったり、消失したりして再度歩行が可能になる間歇跛行(かんけつはこう)と、腰部の後屈時の痛みなどです。また、歩行時は前屈位でシルバーカーなどを押すと、一般的に症状は軽くて済むようです。

 太もも、尻、すねの外側、ふくらはぎなどのしびれ、座骨神経痛などもあります。ただ、閉塞(へいそく)性下肢動脈硬化症もよく似た症状を呈することがあるので、常にこれらとの鑑別診断が必要になります。

 相談の男性は、椎間板の狭小化が認められています。MRIの所見は記載されていないので、どの程度の脊椎管狭窄所見があるのか不明です。腰部脊椎管狭窄症も軽症のときは血液の流れをよくする薬がよく処方され、症状の改善を見ることもあります。

 患部(しびれ、疼痛(とうつう)部位)は一般に冷やさない方がよいでしょう。疼痛が強いと鎮痛剤(内服、座薬)、さらには硬膜外ブロックなどの保存的治療をしますが、それも効果がなければ手術が必要です。しかし、脊椎管狭窄症と診断されたわけではないので、もう一度整形外科で診察・治療を受け、場合によっては適切な経過観察をしてもらう必要があります。

 整骨院でいわれた「筋肉のずれ」については医学的にはありえないことです。気にする必要はないと思います。

徳島新聞2006年1月29日号より転載

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