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【質問】 背中にほくろのようなものが

 18歳の息子の背中にほくろのようなものがあります。真ん中が黒く、周りが茶色で、真ん丸ではありません。大きさは4~5ミリあり、盛り上がっている感じです。2~3年前に見たときから大きさは変わっていないと思います。皮膚癌(がん)ではないか、と心配しています。



【答え】 色素性母斑 -専門医で受診、相談を-

阿南共栄病院 皮膚科 赤澤 啓人

 ほくろは、病名としては「色素性母斑」あるいは「母斑細胞性母斑」といい、ほくろのない人はいないと断言できるほどありふれた疾患ですが、原因は不明です。生まれつきあるものも、出生後に出現するものもあります。

 色素細胞に似た形態や機能を持つ母斑細胞という細胞が、表皮や真皮、時に皮下脂肪組織で増殖して発症します。大きさは1センチ以内のことが多く、平たんな色素斑あるいは盛り上がる丘疹(きゅうしん)が、種々の色調を伴います。多くは茶色から黒色調ですが、時に紅色あるいは正常皮膚色のこともあります。

 質問の文面からは色素性母斑が最も疑われますが、皮膚癌が心配であれば、一度皮膚科医の診察を受けるのが賢明かと思います。診察した上で色素性母斑ならば、経過を見るのでもいいでしょうし、手術で切除してもいいでしょう。手術標本は病理組織検査(細胞を調べる検査)をするので、客観的な診断も付きます。レーザー治療を希望する患者さんも多いのですが、色素性母斑は保険適用外で、効果もいまひとつのようです。

 さて、心配している皮膚癌、中でも「ほくろの癌」といわれる黒色腫について少し触れます。黒色腫の発生部位は、日本人では足の裏が一番多いのですが、体のどの部分にも発症する可能性はあります。次に症状の特徴を挙げてみます。

 <1>大型の皮疹…最大径が多くの場合は7ミリ以上であり、10ミリ以上であることも多い<2>不規則な形状…左右非対称の不規則形状を呈し、外形に鋭角状の陥入を伴うことが多い<3>多彩な色調…黒褐色調が主体だが、淡褐色から濃黒色までの濃淡差が無秩序に認められる。また、灰白色、紅色、灰青色などの多様な色調を帯びることもある<4>不均一な境界…病変の境界が一様でなく、部分的に境界鮮明な個所と不鮮明な個所が見られる<5>経過…隆起しない色素斑状皮疹として成人以後に気づかれることが多く、当初は変化が目立たないことが多い。その後に拡大し、隆起して結節状病変を生じ、さらに進行するとびらん、潰瘍(かいよう)化するに至る。

 このように書くと難しいですが、要するにほくろのようなものが大きかったり、その色や形が、いびつでおかしいと感じるような場合は、黒色腫を疑って皮膚科を受診することを勧めます。相談のケースは<1>から<5>まで、いずれにも当てはまらないので、黒色腫の可能性は低いと思います。しかし、文面だけで判断するのは危険です。繰り返しになりますが、皮膚科を受診して専門医に相談してください。

徳島新聞2006年1月8日号より転載

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