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【質問】 肩が痛くて眠れない

 60代の男性です。両腕が痛み、肩より上に上がりません。整形外科、接骨院、指圧院などを転々としながら、4カ月余り治療をしていますが、一向に良くなりません。特に夜は肩や腕が痛く、不快感と疼痛(とうつう)がひどくて眠れない日々が続いています。病院のX線検査は「異常なし」で、注射を打ってもらい、鎮静剤を処方してもらっていますが、全く効き目はありません。何か良い治療法を教えてください。



【答え】 五十肩 -関節を動かすことが大切-

いわせ整形外科 院長 岩瀬 六郎(徳島市南出来島町1丁目)

 文面から「五十肩」と思われます。五十肩とは、中年以降に発病する、肩関節の疼痛と拘縮(関節の動きが悪いこと)を来す病気で肩関節周囲炎、凍結肩ともいわれます。


 五十肩の病態を理解してもらう前に、肩関節の構造について説明します=図参照。肩関節は、肩甲骨のくぼみに上腕骨の骨頭が、はまり込んだ形です。肩甲骨のくぼみが浅いため、上腕骨頭のはまり方が浅く、関節が不安定です。

 このため、肩甲骨から4つの筋肉が、上腕骨頭の上部を覆うように、上腕骨についていて肩関節をしっかり支えています。4つの筋肉が合わさって腱板(けんばん)となります。

 腱板の上には肩峰(けんぽう)があり、肩峰の下の面と骨頭の間は狭く、腕を上げるたびに、腱板が肩峰に当たります。この衝突が長年にわたって繰り返されるうちに腱板が傷んで炎症を起こすようになります。この腱板は、もともと血管が少ない部位なのでいったん傷つくと修復されにくい性質があります。

 この腱板が傷んで炎症を起こすと、続いて肩峰下滑液包や関節の内部にも炎症が波及して、痛みや拘縮が起きてくるのが五十肩です。

 発病の初期には、炎症が強いため、疼痛も強く、特に夜間、目を覚ますほどの痛さになることがあります。この時期を急性期といいます。

 急性期の治療は肩関節を安静に保って、疼痛を和らげるための薬物療法が中心になります。すなわち、消炎・鎮痛剤の服用と湿布剤の使用から始め、それでも痛みが取れないようなら、坐(ざ)薬を使用したり、ステロイド剤を内服したりします。

 「痛いから」と安静にしていると拘縮がひどくなり、ますます動かしにくくなります。急性期に最も大切なのは、痛みを抑えながら、痛みが強くならない程度に肩関節を動かすことです。

 そのためには炎症の部位(肩峰と腱板の間)にステロイドホルモンと局所麻酔剤を混ぜて注射します。痛みに対してかなり効果がある注射で、直後に専門的な他動的ストレッチ体操を行うことによって、動きが悪い関節が動かせるようになります。週に1~2回、数週間続けますが、急性期の早い時期であれば、治療の期間をより短縮できます。

 急性期を過ぎると、痛みは少し楽になりますが、やがて拘縮を主徴とする慢性期になります。この時期の治療は、少々痛みが残っていても、積極的に自動運動を行うことです。例えば、棒体操や肋木(ろくぼく)、輪転機を使った機能訓練などの体操を行います。温熱療法を併用すれば、一層の効果が期待できます。

 患者さんによって、治るまでの期間は異なります。ほとんどの症例は6カ月以内には良くなりますが、2年くらいかかる人もいます。

 最後になりましたが、五十肩の治療の要点は、うまく痛みをコントロールしながら、急性期の早い時期より、肩関節を少しずつ動かすことに尽きます。以上のことを参照にして、治療に頑張っていただきたいと願っています。

徳島新聞2005年12月25日号より転載

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