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【質問】 母がこむら返りでつらそう

 母親が毎晩のように少し眠ったあとにこむら返りを起こします。とても痛くてつらそうです。84歳ですが、元気でゲートボールをしたり、軽い農作業もしたりしています。昼間よく動くと、夜間必ずといっていいほど引きつる傾向があります。漢方が効くという話を聞き、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を処方してもらい1日3回、2週間ほど服用しました。しかし、以前から浮腫気味だった下肢がひどくなり、足の甲も裏も腫れ、顔面もうつむいていると眼がふさがりそうに腫れるのです。副作用を疑って服用を中止しましたが、浮腫は思わしくありません。受診したところ利尿剤を処方され、服用していますが腫れは引きません。現在は血圧の薬を服用しながら、カルシウムや深海ザメ肝油などのサプリメントも飲んでいます。いい治療法を教えてください。



【答え】 筋クランプ・下腿浮腫 -筋疲労か病的か検査を-

ほりべ整形外科院長 堀部 和好(徳島市南昭和町1丁目)

 お母さんに対する愛情の深さに感心しました。相談は筋クランプと芍薬甘草湯の副作用による下腿(かたい)浮腫と考えます。

 筋クランプは有痛性の強直性筋収縮のことで、生理的には筋疲労時・運動後(特に夜間)などに起こりやすい、いわゆる「こむら返り」です。高齢者に多く、妊婦にもよく見られます。

 病的には糖尿病、肝硬変、尿毒症、低カリウム血症や低カルシウム血症、低ナトリウム血症、低マグネシウム血症などの電解質異常、多発性ニューロパチー、粘液水腫、甲状腺中毒性ミオパチー、熱射病などに伴って反復性に出現したり、このような疾患があるところに筋疲労があると出現しやすくなったりするといわれています。

 お母さんは病的なものではないと思いますが、かなり頑固に出現し、下腿浮腫もあるので、一度医師の診察を受けてください。

 筋クランプの治療は、先に述べたように疾患が隠されていることがあるので、診察・検査を受け、病気があればその治療を受けてください。

 高齢者に発症しやすいのは骨粗鬆(こつそしょう)症、円背・腰部脊椎管(せきついかん)狭窄(きょうさく)症などで下肢筋力が低下するために筋疲労が起きやすいからです。過労を避け、水分・電解質をスポーツドリンクなどで補給するといいでしょう。筋肉内の解糖代謝によって乳酸が蓄積するのを予防するため、ビタミンB1を取るといいという学者もいます。

 また、たくさんサプリメントを服用しているようですが、ものによっては病状を悪くする場合もあるので、病気のときは中止して医師とよく相談してください。

 次に筋クランプが実際に発生した(発生させた)状態を検証します。特に痛いのは下腿・足で、患部が冷えているときに急にその筋肉を伸ばした場合に起きることが多いのです。寝巻きをパジャマに替えたり、保温用のサポーターをつけたりして患部を冷やさないようにすると発作が少なくなります。

 発生した筋クランプに対しては、収縮した筋を他動的に伸ばせば数秒で軽快することが多いのです。時にしばらく続くこともあります。反復する場合はマッサージや温湿布が効果的でしょう。

 お母さんは高齢なので薬物投与はできるだけ避けてください。治療薬(薬物療法)には、軽症のときは緩和性の抗痙縮(けいしゅく)薬、中等度以上では筋性筋弛緩(しかん)剤、抗痙攣(けいれん)剤がありますが、高齢者ではふらつきを起こしやすく、転倒の危険があります。

 芍薬甘草湯はよく筋クランプに処方されます。ドーピング検査に引っ掛からないので、スポーツの肉離れによく使用されます。しかし、副作用を伴うこともあります。

 芍薬甘草湯はもちろん、一般の漢方薬にも甘草が含まれていて、汗をかく夏場には低カリウム血症、偽アルドステロン症が表れやすくなります。お母さんの場合が該当するものか即断できませんが、下腿浮腫を起こす可能性はあります。浮腫を取るための利尿剤にはルーブ系・チアジド系薬剤のほかにも、抗アルドステロン系の薬剤があります。よく反応するものを処方してもらってください。ただ、浮腫が起きる原因はいろいろあるので、必ず内科医の診断を受けてください。

 最後に要点をまとめておきます。

 <1>筋疲労により引き起こされた筋クランプと思われるが、病的なものがないか診察を受けておく。

 <2>ゲートボールや農作業のとき(特に夏場)は、水分やミネラルをスポーツドリンクなどで取る。

 <3>下肢の浮腫は芍薬甘草湯による副作用の可能性もある。内科医に電解質の検査を含めて診察してもらう。利尿剤によっては、現在の浮腫は改善する。

徳島新聞2005年7月31日号より転載

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