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【質問】 やけどあとを目立たなくしたい

 26歳の女性です。10歳のときに太ももにやけどを負い、6センチほどのあとが残ってしまいました。やけどあとには色が付いていますが、ひきつれているということはありません。以前、医師から「悪性化することはないので、特に手術する必要はない」と言われましたが、外見が気になっています。手術を受けて目立たなくしたいと思っていますが、心配もあります。手術について詳しく教えてください。



【答え】 熱傷後瘢痕 -手術でも線状の傷残る-

徳島大学病院 形成外科副科長 松本 和也

 質問の内容から、現在の状態は熱傷後瘢痕(はんこん)と考えられます。瘢痕とは、傷あとのことです。

 一般的に、熱傷後瘢痕には褐色の色が付いたり(色素沈着)、逆に白く色が抜けたり(色素脱出)することもあります。また、瘢痕によってひきつれたり(瘢痕拘縮)、硬くなったり、時々切れたりして将来的に悪性化することもあります。ただ、質問の女性は幸い瘢痕拘縮はなく、以前に医師から言われたように悪性化の可能性も低いと思われます。

 では、手術の方法について説明します。「6センチほどのやけどあと」とのことですが、その幅が狭い場合(目安として、つまんで引き寄せられるくらい)なら、瘢痕を切り取る方法(切除縫合法)があります。縫合の方法は「真皮埋没縫合」といい、皮膚の深いところを、溶ける糸を使って縫い合わせます。手術後も傷あとが広がらないように約3カ月間は肌色のテープをはってもらいます。それでも、幅約5ミリ程度の傷はどうしても残ってしまいます。

 瘢痕の幅が広い場合(つまんでも引き寄せられないくらい)なら<1>数回に分けて切除縫合する方法(分割切除法)<2>全体を切除し、植皮する方法(植皮術)<3>シリコン製の風船様のものを、皮下に入れて周りの皮膚を伸ばしてから切除する方法(組織伸展法)-などがあります。

 分割切除法は数回の切除を3~6カ月以上の間隔を空けて行うものですが、最終的には線状の傷あとが残ります。また、やけどの幅がかなり広い場合には切除後に太ももの輪郭にへこみができてしまうこともあります。

 次に植皮術について述べます。これには全層植皮と分層植皮があり、全層植皮の方がきれいになりやすい性質を持っています。最終的には植えた皮膚を縁取る傷あとが残ります。また自分の皮膚を他の目立たないところ(例えば太ももの付け根など)から取るので、そこにも線状の傷あとが残ります。

 最後に組織伸展法です。まずシリコン製の袋を傷あとの近くの皮下に入れる手術を行い、その後通院して袋を膨らませます。十分袋が膨らんで周りの皮膚が伸びたら、2回目の手術でシリコンの袋を取り出し、やけどあとを切除します。最終的には、切除法と同様に線状の傷あとが残ります。

 ただし、この組織伸展法は頭部、顔面部、体幹部(胴体の部分)で使われることが多く、今回のようなふとももの傷あとでは、部位・大きさによっては使用できないかもしれません。

 いずれにしても、質問の女性の場合はひきつれはなく、きれいにするのが目的で、整容的な手術になります。つまり、現状でも特に生活に困ることもないわけですが、精神面で大きな負担となっているのであれば手術を受けることを考えてもいいと思います。ただし、その際には手術後の結果(最終的に残る傷あと、経済的・時間的負担も含めて)と手術に関する危険性について十分理解し、判断することが必要です。そのためにも形成外科専門医の資格を持っている医師を受診することを薦めます。

徳島新聞2005年7月3日号より転載

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