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【質問】 まぶたがピクピクする

 31歳の女性です。1年前に急に始まった右目の下まぶたの痙攣(けいれん)が止まらずに悩んでいます。痙攣のせいで視界が悪くなることはありませんが、いつもピクピク痙攣しているのでとても気持ちが悪いのです。眼科を受診してみましたが「疲れ目の症状なので、気にせずにほっておくといつの間にか治りますよ」と言われました。しかし、1年たった今でも痙攣は続いています。このまま一生治らないのかと思うととても不安です。原因や治療法について教えてください。また、どの医療機関に相談すればいいのかも教えてください。



【答え】 顔面ミオキミア -頭部MRI検査など必要-

いのもと眼科内科 猪本 康代(板野郡北島町鯛浜)

 「まぶたがぴくぴくする」という症状は、患者さんからよく聞く訴えです。ただ「まぶたの痙攣」はすべて「眼瞼(がんけん)痙攣」と単純には片付けられません。顔面ミオキミア、本態性眼瞼痙攣、片側顔面痙攣などが考えられます。

 顔面ミオキミアは顔面神経が支配する眼輪筋の一部に異常な興奮が発生することで生じます。下眼瞼に多く生じ、眼精疲労や寝不足のときに起こったり、顔面神経麻痺(まひ)の後に起こったりします。また、そのほかに脳幹部の腫瘍(しゅよう)や炎症でも生じるといわれています。

 本態性眼瞼痙攣は、まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)の痙攣によって突発的に両眼を閉じてしまい、しばらく開けることができなくなります。最初はまぶしさを強く感じ、まばたきが増え、ひどくなると目が開けられなくなってしまうこともあります。そのため車の運転などができなくなったりして、仕事や生活をする上で支障が出ることもあります。ただ、痛みを伴うことはありません。40~70代の中高齢者に多く発症し、男女比はおよそ1対2で女性に多い傾向があります。原因ははっきりと分かっていませんが、大脳基底核の機能異常と推定されています。

 片側顔面痙攣は、顔の表情をつくる小さな筋肉が自分の意思に関係なく痙攣するもので、片側性が原則です。最初は片方の目の周りの軽い痙攣ですが、次第に同じ側の額、ほお、口元、あごへと広がっていきます。強い痙攣により顔がゆがんだ状態になることもあります。顔面神経が脳幹から出たところで動脈などに圧迫されることが原因と考えられています。

 さて質問の件ですが、片眼のまぶただけで、その他の症状は1年間ないので、顔面ミオキミアの可能性が高いと思われます。ただ長期間経過後に前記の眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の症状が出ることもあります。診断には、眼科的検査だけでなく、基礎疾患の有無を調べるために頭部MRI検査なども必要になってきます。明らかな病変がなければ、そのままで経過観察したり、抗痙攣薬などを内服したりします。

 片側顔面痙攣の場合は、血管の圧迫を解除する手術療法もあります。ただ薬物療法が効かない場合や手術を避けたい場合は、最近ボツリヌス毒素療法が行われるようになっています。この毒素は筋肉の収縮を抑制する神経毒であり、薄めたボツリヌス毒素を眼輪筋、顔面筋に注射することによって、一時的に注射部位の痙攣を消失させます。

 治療効果は注射後3~6カ月程度しか続かないため、再度注射する必要があります。副作用は目が閉じにくくなったり、ものが二重に見えたりしますが、一時的で元に戻ってきます。全身に対する副作用はないため通院治療が可能です。

 しかし、この治療法は現時点で、厚生労働省に眼瞼痙攣と片側顔面痙攣には認可されていますが、顔面ミオキミアには認められていません。また、ボツリヌストキシン療法研究会に登録された医師でなければ治療できません。質問の女性の場合には眼科で経過を見ながら他の症状が出てくるようなら、神経内科、脳外科とも連携しながら治療をしていく必要があると思われます。なおボツリヌストキシン療法研究会の問い合わせは〈フリーダイヤル(0120)611094〉です。

徳島新聞2005年6月5日号より転載

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