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【質問】 膝の激痛で正座できず

 67歳の女性です。60歳ごろから膝が痛くなって正座ができなくなりました。薬局の店員に勧められ、グルコサミンの薬を飲んでいます。今は、少しの時間は正座ができるようになりましたが、半年ほど前から立っているときに膝が「ガクッ」となったり、「ポキッ」と音がしたりします。多いときには1日に2~3回あります。涙が出るくらい痛みますが、しばらくすると元に戻って普通に歩けます。以前は45キロだった体重は、今では51キロに増えています。身長は151センチです。太ったせいとも思い、1日30分ほど歩いたものの、3日くらいすると膝が痛みます。「ガクッ」となったり、「ポキッ」と音がしたりするのは何が原因なのでしょうか。



【答え】 変形性膝関節症 -進行予防 大腿四頭筋を強化-

中川整形外科 院長 中川 幸夫(板野郡藍住町)

 膝の痛みは「変形性膝関節症」が原因と考えられます。膝の関節は、曲げたり伸ばしたり回したりと、いろいろな動きによって下肢の運動の中心的役割を果たしています。また、全体重を支えている関節なので、負担が大きく傷みやすい関節の一つです。私たち整形外科医は、高齢で特にはっきりした原因がなく膝が痛んだり、動きが悪くなったりして来院すると、まず変形性膝関節症を考えるくらい多い疾患です。

 この疾患の症状は、初期から中期では、歩き始めや走り始め、階段の上り下りなどに痛みます。さらに進行すると膝の運動域が制限され、正座ができにくくなったり、O脚状に変形したり、膝が腫れたりするようになって痛みが強くなります。これらの症状の原因は膝の使いすぎと、体重過多によって関節の間でクッションの役割を果たしている関節軟骨がすり減ったために起きると考えられています。

 質問の女性は「ガクッ」となったり、「ポキッ」と音がしたりして涙が出るほどの痛みがあり、しばらくして普通に歩けるとのことです。これは変形性膝関節症がかなり進行した症状と考えられます。

 まず「ガクッ」となる原因を説明します。先ほど述べた関節軟骨がすり減ることによって関節の間隔が狭くなったり、傾いたりして関節を支えている靭帯(じんたい)などが緩み、大腿(だいたい)部の筋肉(大腿四頭筋)の力や、膝関節を固定する力が弱くなります。このような状態で、急に立ったり、歩き始めたりすると膝が固定できずに横滑りします。これが「ガクッ」となる原因です。このような状態を患者さんは「膝が逃げる」とか「急に膝の力が抜けた」と言います。

 次いで「ポキッ」という音ですが、膝の関節のクッションになっている軟骨の板(半月板)がすり減ったり、一部断裂が起こったりした結果、滑らかに滑らなくなり、骨と骨との間にかみ込むようになります。その半月板が外れるときに「ボキッ」と音がすると同時に、強い痛みを感じます。バネのような状態ということで「弾撥(だんぱつ)膝」とか「バネ膝」と言います。なお、このようなことが1日に何回も起こるようであれば、手術が必要なことも多いので、整形外科を受診してください。

 変形性膝関節症の進行を予防するため、特に推奨したいのが大腿四頭筋の強化訓練です。これは大腿四頭筋の強化によって膝関節の固定力を増強し、不安定な膝になることを防ぐという簡単な方法です。

 まず、足首に0.5~1キロのおもりを付けます。あおむけに寝て膝を伸ばし、おもりを付けた片足を約10度ぐらい持ち上げ、5秒数えてゆっくりと下ろします。10~20回の繰り返しを1セットにして、1日2~3回行います。腰に負担を感じる場合は、反対側の膝を立てた状態で行ってください。

 そのほかに推奨できる訓練は膝への負担が軽い水中ウオーキングです。また、肥満は膝に負担をかけるので、適正体重を目標に減量を心掛けてください。膝の痛みを和らげるには、サポーターやひざ掛けなどを使って膝を温める工夫をしてください。

 膝の痛みを起こす疾患としては変形性膝関節症以外にも、関節リウマチ、痛風などがあります。区別するにはエックス線の画像検査、血液検査などが必要なので、整形外科の受診をお勧めします。

徳島新聞2005年4月3日号より転載

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