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【質問】 尿酸値が高いと言われた

 55歳の男性です。ここ数年、健康診断の際、尿酸値が高いと指摘され、悩んでいます。医師からは、アルコールを控えるように言われましたが、サラリーマンは付き合いも多く、すべて断るというわけにもいきません。同僚からは「ビールは控えたほうがいいが、プリン体のカットされた発泡酒なら大丈夫だよ」と聞きました。本当でしょうか。尿酸値が高いとどんな影響があるか教えてください。



【答え】 高尿酸血症 -肥満予防など生活習慣改善を-

徳島クリニック 小濱 美智(徳島市昭和町1丁目)

 あなたは高尿酸血症があるようですね。高尿酸血症は、血液中に尿酸が増加して、全身に悪影響を及ぼす代謝異常の病気です。尿酸の原料はプリン体です。プリン体は、人体の細胞核構成に不可欠な成分ですが、代謝されると尿酸となり、大部分は腎臓から排せつされます。

 高尿酸血症は、肝臓での尿酸産生の過剰(産生過剰型)、腎臓から尿中への尿酸排せつの減少(排せつ低下型)、あるいはその両方(混合型)が原因となって起こりますが、混合型が多いといわれています。型は検査で分かり、薬の選択に参考になります。

 尿酸産生の過剰は、プリン体を多く含む食物の取り過ぎ、細胞の新陳代謝が高まったとき、細胞の破壊(がんなど)のときなどに起こります。尿酸排せつ低下は、腎臓の尿酸排せつ機能低下によるものですが、個人差(遺伝など)、性差があります。高尿酸血症を起こすのは、ほとんどが男性です。

 プリン体は、肉や魚介類、ビールなどに多く含まれていますので、飽食の時代といわれる現在、高尿酸血症が大変多くなりました。最近では、一般的に行われている成人の健康診断で、男性4~5人に1人は高尿酸血症です。

 ところで、質問の一つの発泡酒は、プリン体の量はビールに比べると半分以下ですが、他のアルコール類よりは多いようです。しかも、ビールと発泡酒のエネルギー(カロリー)はほぼ同じであり、多量飲酒は肝障害、肥満、高尿酸血症につながります。さらに、アルコール自体が尿酸排せつを遅らせますので注意しましょう。

 2つ目の質問ですが、尿酸高値が長く続くと(特に血清尿酸値が1デシリットル当たり8ミリグラム以上)、次のような病気を引き起こすといわれています。

 <1>突然、激しい関節炎および関節周囲炎を起こし、これが繰り返される急性痛風性関節炎(痛風発作)。好発部位は足の親指の付け根<2>関節や骨、軟骨、軟部組織などへ尿酸の結晶が沈着してできる痛風結節<3>腎臓をおかす痛風腎<4>腎結石や尿管結石などの尿路結石<5>糖尿病や高脂血症、高血圧症などの生活習慣病。

 特に<5>は動脈硬化症加速の原因となり、心血管系の疾患を引き起こします。

 複数の病気が重なり、代謝疾患症候群(メタボリックシンドローム)になると、それぞれは予備軍程度でも、生命を脅かす心筋梗塞(こうそく)や脳卒中の危険度が急増します。

 本来、高尿酸血症の方は、無症状で経過する期間が長いので、健康と自覚していても、痛風の患者さんと同じなのです。長期間の放置や不十分な治療は、上記疾患の危険を回避できなくさせます。

 正常の血清尿酸値は、男女ともに1デシリットル当たり7ミリグラム以下です。あなたは、ここ数年、尿酸高値を指摘されているようですから、生活習慣を改善しましょう。

 心掛けてほしいのは<1>肥満の予防<2>動物性タンパク質(プリン体が多い)と植物性タンパク質のバランスを取り、ビタミン、ミネラル源も十分に取る<3>アルコールは尿酸排せつを悪くし、組織への尿酸沈着を促進するので、発泡酒も含めて適量にする<4>水分も十分取る<5>神経興奮の結果として尿酸が上昇しますので、精神的な緊張や、ストレスの持続を避ける<6>連日の激しいスポーツを避ける-などです。

 日々の生活習慣改善で、尿酸値も低下するでしょう。そして、定期的な健康診断や、医師の診察をお勧めします。

徳島新聞2004年10月17日号より転載

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