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【質問】 白血球が急激に減る

 69歳の女性ですが、7月の検診で、白血球の減少が著しいので、毎年検査を受けるように指摘がありました。これまでは肥満、高血圧(降下剤を使用中)、高脂血症が要注意だといわれていましたが、今年は白血球の問題が加わりました。5年前に65歳の夫が白血病で死亡し、その2年後に80代の夫の母が、老衰と白血病で死亡しました。遺伝性なのかと疑いましたが、私には血縁はないので、食生活が影響しているのかとも考えています。私は、時折、目まいなどはありましたが、今は元気で楽しく過ごしています。野菜中心に近い食生活なので、貧血が影響しているのでしょうか。1年後にまた数値が下がるのではないかと心配しています。何か治療法はありますでしょうか。



【答え】 好中球減少 -血液専門外来の受診を-

徳島市民病院 内科 渡辺 滋夫

 血液の中には、白血球、赤血球、血小板の3種類の細胞があり、骨髄でつくられています。白血球には、好中球(こうちゅうきゅう)、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球などの種類がありますが、その大部分は好中球とリンパ球です。好中球は細菌の病気を、リンパ球はウイルスの病気を防いだり、治したりする仕事をしています。従って、白血球に異常を起こす病気では、免疫力が低下し、感染症を起こしやすくなります。

 赤血球に含まれるヘモグロビンが肺から取り込んだ酸素を全身の組織に運んでいます。ヘモグロビンが不足した状態を貧血と呼びます。貧血が進むと組織が酸素不足になり、動悸(どうき)、息切れ、疲れやすいなどの症状が出てきます。血小板は出血を止めるのに重要な働きをします。

 検診で白血球の減少を指摘され病院を受診するケースは少なくありません。1立方ミリメートルの血液の中に含まれる白血球の数は4000個から9000個ですが、特に病気が見つからないのに、3000個前後の低めの数値を示す人が結構います。

 白血球減少は、ほとんど好中球減少によるものです。好中球は1立方ミリメートルの血液の中に1500個以上あります。ですから、白血球が少ないということは、白血球全体の数が4000個以下または好中球が1500個以下の状態をいうことになります。

 好中球が1000個以下になると細菌感染に対する抵抗力が普通の人より弱くなります。口の粘膜のただれ、のどの痛み、発熱などが起こってきます。特に500個以下になったら、危険な状態といえます。好中球が全くなくなる状態を無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)といい、すぐ入院し治療する必要があります。

 好中球減少の成因は、大きく2つに分けられます。

 一つは、骨髄の病気による血液の産生能の低下。例えば、再生不良性貧血、骨髄異形性症候群、急性白血病、多発性骨髄腫(こつずいしゅ)、巨赤芽球(きょせきがきゅう)貧血、がんの骨髄浸潤などです。このときには、赤血球や血小板の数も減少します。

 もう一つは、好中球の異常破壊または脾臓(ひぞう)への貯留亢進(こうしん)。例えば、薬に対するアレルギー(薬剤起因性無顆粒球症)、ウイルス感染症(伝染性単核球症、インフルエンザ、はしか、風疹(ふうしん)、水痘(すいとう)、ウイルス性肝炎)、重症細菌感染症、リケッチア感染症、粟粒(ぞくりゅう)結核、肝硬変、バンチ症候群、フェルティ症候群、膠原(こうげん)病(びょう)(全身性エリテマトーデス、関節リウマチ)などです。

 今回の相談内容からは、白血球の減少の程度、特に好中球数が分かりません。前述したように、正常でも白血球数が3000個以下の人もいます。病気の診断は白血球数だけでなく、それぞれ病気に特有な症状、検査結果などを統合して確定します。白血球数が3000個前後で何の症状もなければ、あまり心配はありません。しかし、白血球の減少がきっかけとなって重大な病気が見つかることがありますので、一度、血液専門外来を受診することをお勧めします。

徳島新聞2004年9月5日号より転載

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