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【質問】 かすれた声が治らない

 3歳の孫娘のことですが、5月ごろからずっと声がかすれたままなんです。今年から保育園に入園して、張り切り過ぎて、大きな声で歌ったり、叫んだりしているせいかなあとも思っています。耳鼻科では「これといって悪いところはなし。元気だし、心配ない」と言われました。のどの奥に何かできているのでは、と尋ねたところ、のどの奥を見るには、全身麻酔をしないと見ることができないと言われました。子どもはじっとしていないからだそうです。今でも声がかすれたままで、あまり必死になって話そうとすると、苦しいらしく、顔が紅潮します。こんなに長い期間、治らないものでしょうか。精密検査は受けなくてもいいでしょうか。



【答え】 小児嗄声 -手術せず保存的治療優先-

徳島県耳鼻咽喉科医会 立花 文寿

 医学的には、声がかれた状態を嗄声(させい)と呼びます。小児期にみられる嗄声は「小児嗄声」または「学童期嗄声」と総称されます。このうち、小児嗄声とは、日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会学校保健委員会では「幼稚園から小学校低学年にかけて多発するもので、無理な発声が習慣となり、声帯に炎症を生じて嗄声を来し、慢性の経過をたどるもの」とされています。

 質問によると、3歳の孫娘さんに嗄声が持続しているとのことですが、原因となる疾患として、声帯結節が最も考えられます。声帯結節とは、声の多用や乱用により、声帯への刺激が持続し、声帯の中央部が腫れる、あるいは部分的に厚くなった状態で、多くの場合、左右の声帯に対称的に形成されます。声帯にできた「ペンだこ」のようなものと考えてもらえれば、理解しやすいかと思います。

 小児声帯結節に関する臨床統計によれば、男女比は4対1もしくはそれ以上で、圧倒的に男児に多い疾患です。また、年齢的には7-9歳にピークがあります。

 診断は、喉頭鏡や喉頭ファイバースコープを用いて、声帯を見ることで行います。小さいお子さんでは、喉頭鏡での観察が十分には行えないため、通常は喉頭ファイバースコープを用いての観察が必要になります。

 喉頭ファイバースコープは、胃カメラの装置を小型にしたものと考えてください。挿入部の太さは、一般的には3-4ミリで、この太さのスコープはほとんどの医療機関が所有していますが、医療機関によっては2ミリの小児用スコープを所有しているところもあります。

 胃カメラは口から飲み込みますが、喉頭ファイバースコープは鼻から少しずつのどの奥の方に入れて観察します。鼻の中を通り抜けていくときに多少の違和感があったり、また咽頭反射(のどの奥を触ったときに出る吐き気)が強い人では多少の苦痛を伴いますが、通常はそれほどつらくありません。

 子どもの場合、泣いたり暴れたりして観察が十分にできないこともありますが、大抵は観察可能です。喉頭ファイバースコープで観察できない場合は、全身麻酔での観察が必要になることもあります。

 治療ですが、小児声帯結節は声変わりの時期になると自然に治ることが知られていますので、原則的に手術などの外科的治療よりも保存的治療を優先させます。声の衛生を守るため、声の使い方に注意をして声帯に負担をかけない発声をさせるようにします。

 具体的には「大声を出さない、叫ばない、力んで声を出さない、連続して長時間しゃべらない、奇声を発しない、運動しながら声を出さない」などです。また訓練によって、正しい発声ができるようにすることも大切です。

 一方、「高度な嗄声で学校の音楽教育に対応できない、本の朗読にも支障が出ている、友達とのコミュニケーションにも不便がある」などの場合には、全身麻酔下で手術を行って結節を切除することもあります。

 このほかに考えられる疾患として、声帯やその周辺に腫瘍(しゅよう)ができていたり、声帯を動かす神経の麻痺(まひ)により嗄声が起こっていることもあります。これらの疾患の場合には、小児声帯結節とは治療方法が全く異なりますので、一度近くの耳鼻咽喉科を受診してみてください。

徳島新聞2003年12月21日号より転載

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