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県民の皆さまへ

【質問】 浣腸で排便するのですが・・・

 35歳の女性です。普通に生活していると1週間以上便通がありません。市販の薬や漢方薬を試してみたのですが効果はなく、最後には浣腸(かんちょう)で排便します。30ミリリットルの浣腸を1回に5個使っています。体に影響はないでしょうか。周りの人からは、酸素浣腸がいいと言われましたが、おなかに優しい薬があれば教えてください。また、浣腸以外に良い方法はないでしょうか。



【答え】 便秘症 -隠れた疾患の検査から-

小川病院 院長 小川 哲也(鳴門市撫養町南浜)

 便秘や下痢という排便機能障害の患者さんは、最近多くなっています。しかし、何が正常の排便状態であるかは難しい問題です。

 また、相談の便秘症にも原因はいろいろなものがありますので、単に、下剤を飲んだり、浣腸をすればよいということではありません。便秘の陰にいろいろな疾患が隠れていることがよくあります。

 便秘の原因となり得る疾患は多く、主なものを挙げてみますと、甲状腺機能低下症、大腸の腫瘍(しゅよう)や炎症、薬剤性(高血圧症・胃潰瘍(かいよう)・向精神薬などの長期服用)、過敏性腸症候群、直腸脱、不顕性直腸脱、孤立性直腸潰瘍、直腸粘膜脱症候群、直腸過敏症、骨盤内臓会陰下垂症、痔核(じかく)、裂肛(れっこう)、痔ろうなどです。

 まずは、以上のような疾患がないか、近所の内科や消化器科で、医師の診断を受けることをお勧めします。

 次に、前記のような疾患のない場合は生活や食事の習慣を見つめ直してみましょう。

 運動や食事量の不足によっても腸の緊張が低下します。腸はサーカディアンリズム(1日を周期とするリズム)によって動いています。冷たい水や朝食を食べると、胃からの刺激が迷走神経・脊髄(せきずい)・骨盤内臓神経へと伝わり、結腸の蠕動(ぜんどう)(動き)を引き起こし下行結腸まで来ていた前日の残りかすが一気に直腸まで下降します。この刺激を中枢神経で便意と感じてトイレへ行くことになります。

 このような一連の胃結腸反射によって排便はスムーズに行われます。従って<1>朝食を取らない<2>夜ふかしして寝起きが悪い<3>便意があっても我慢してトイレに行かない-などの生活の乱れが、胃結腸反射を弱めてしまいます。

 その次には、食事量や食物繊維の不足により、腸管内容が減少し腸管の刺激が弱まっていることも考えられます。特にダイエットなどが原因になっていることが多いです。

 日本に多くみられる低緊張性便秘は、運動不足やうつ状態が、原因となります。精神的ストレスが強いときには、中枢からの異常刺激が自律神経を介して腸管に伝わり、過緊張性便秘となります。

 質問では、市販の薬剤を試してみたとのことですが、センナを含んでいる下剤を長期連用することで腸が過緊張状態となり便秘がひどくなり、ますます薬を増量するという悪循環に陥ることもあります。センナは市販の下剤のほとんどに含まれていますので、この場合はまず薬剤の中止と腸管運動促進剤と緩下剤への切り替えを行います。

 また、浣腸の量が心配なようですが、これは問題ないと思います。一般には、150ミリリットルまでが常用量とされています。でも、食事、運動、生活習慣などに問題があるようでしたらこれらを改善して、できるだけ浣腸や薬剤に頼らなくて済むようにしましょう。

 漢方薬にもいろいろな薬剤がありますが、本来は「証(しょう)」と呼ばれる中国医学独特の診断に基づいた処方が必要です。

 便秘に用いられる代表的な処方に「大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)」があり、これは筋力の弱い人やコロコロ便しか出ない人らに最適といわれています。これ以外にもいくつもの処方がありますので、東洋医学専門医の診断を受けるのが望ましいと思います。

徳島新聞2003年6月8日号より転載

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