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【質問】 心臓の鼓動強く、のどに違和感

 48歳の主婦です。自律神経失調症で2年間も悩まされています。交感神経のスイッチが入りっぱなしで、心臓の鼓動が強く、のどの違和感、胸の締め付け、脈の乱れなどの症状があります。薬は1日3回、服用していましたが、症状が軽くなったので1回に減らしたことがありました。しかし、症状が強くなって、1日に2回にしたり、3回にしたりの繰り返しです。どういうふうにしたら、スイッチの切り替えがうまくいくのですか。生活方法や薬の服用などについて教えてください。



【答え】 自律神経失調症 -生活にリズムとゆとりを-

久保医院 久保 晨男(徳島市佐古四番町)

 最近、更年期を迎えた女性だけでなく、中高年の男性や若い人たちの間にも頭痛、首や肩のこり、のぼせ、口渇、発汗、のどが締め付けられる、息が詰まる、動悸(どうき)、めまい、吐き気、下痢、手足の冷感、しびれ感、だるくて疲れやすい、無気力で不眠、不安、イライラするなど原因不明の症状を訴える人が増えてきました。

 こうした症状のことをまとめて、医学的には「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼んでいます。たいていは各科の病院で種々の検査を重ねても異常が見つかりません。その結果、自律神経失調症と判断されます。自律神経失調症はほかの病気のように、はっきりした検査データの異常としてとらえにくいため、本人にとって辛く苦しい症状なのに、病気として周囲の人に理解されにくいところがあります。

 自律神経失調症は文字どおり、体を支配する自律神経の働きが乱れるために起こる症状です。自律神経は、手足を動かす運動神経と異なり、内臓の働きなど、体の機能を無意識にコントロールする神経で、私たちの生命をつかさどる神経といってもいいでしょう。この自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経が互いに協調して働いてはじめて正常に機能します。

 自律神経失調症は、この自律神経のバランスが崩れた状態をいいます。自律神経失調症は、更年期障害として起こることからも分かるように、女性に多い病気とされていますが、最近はストレス過剰時代を迎え、中高年や若い人たちにも、いろいろなストレスが原因で自律神経失調症が増えてきています。

 自律神経失調症は、本態性型、更年期型、心身症型、神経症型、抑うつ型の5つのタイプに分けられますが、治療方法はどのタイプも薬物療法が主体となります。薬を服用して、症状が安定してきたら、心療内科ではカウンセリング(心理療法)にさらに時間をかけていくようになります。

 薬物治療は自律神経調整剤、精神安定剤、軽い抗うつ剤、漢方薬、ホルモン剤、補助的に睡眠導入剤が用いられます。

 自律神経失調症は、症状が変わりやすく、日によって強さも異なったりする特徴がありますので、一時的に軽くなったり、治ったと思ったりしても、薬は医師の指示通りに服用し、医師と十分に相談して慎重に減量してもらってください。次第に薬から離れていけるようになります。

 自律神経のスイッチをうまく切り替えてバランスよく働かすためには、交感神経を鎮めて副交感神経が正常に働くようにすればいいわけですが、そのためには薬を服用するのと同じように、毎日の生活で次のようなことを心掛けてください。

 <1>早寝早起き<2>食事は抜かず、慌てず、バランスよく<3>適度な運動<4>音楽や芳香を楽しむ<5>ぬるめの風呂にゆっくりと入る<6>家族や友達と会話を楽しむ-といったことなどです。ライフスタイルなどを見直して、生活にリズムをつくり、気分の転換を図って、ストレスを適当に発散させ、心にゆとりが持てる日々にしてみてください。

 薬や生活のリズムなどを整えても、なお不安が残る場合は、リラックスを図る自律訓練法、人間関係などの改善を図る交流分析、その他特殊な心理療法がより効果的な場合がありますので、心療内科などの専門医に相談してください。

徳島新聞2002年7月28日号より転載

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