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【質問】 腕や指先がピリピリ痛む

 70代前半の女性です。最近、夜、床に就いたときに腕の付け根がピリピリとけいれんするような感じがします。また、手の指先も同じようにピリピリと痛んで気になっています。指先は手をこすったりさすったりして紛らわせています。何が原因で、どうすれば治るのでしょうか。



【答え】 腕のけいれん -頚椎の変形などが原因に-

橘整形外科病院 橘 敬三(徳島市寺島本町西2丁目)

 整形外科の外来患者の訴えで、腰痛に次いで多いのは、首から肩、腕にかけての疼痛(とうつう)やしびれなどです。首、肩、腕から手や指にかけての痛み、しびれ、知覚障害、筋力の低下、循環障害などを自覚症状として来院されます。

 その原因として頚椎(けいつい)や椎間板の変形で神経が圧迫される場合や、肩関節の炎症、肘(ひじ)、手関節周辺の関節炎や腱鞘(けんしょう)炎、末梢(まっしょう)神経が靭帯(じんたい)や骨により圧迫される場合が考えられます。

 そのほか、頭の内部の病変、心疾患、代謝・中毒疾患(糖尿病、アルコール、電解質異常など)、膠原(こうげん)病、ウイルス感染、神経・筋肉の病気、歯のかみ合わせ障害なども原因として挙げられます。

 さて、あなたの腕のけいれんの原因については、先に述べた疾患を一つ一つ検討しなければなりませんが、ここでは可能性が高いと思われる頚椎での神経障害が原因となっている場合について説明します。

 頚椎は7つの骨が椎間板という軟骨によりつながって1本の柱となり、頭を支えています。その柱の中には脊柱管(せきちゅうかん)という管があり、脊髄が通っています。その脊髄は、頚椎の骨と骨の間から腕を支配する神経を木の枝のように分岐させて伸ばしています。この枝を神経根といいます。

 頚椎の変形や椎間板突出などの原因により、脊髄や神経根が圧迫されると、首、肩、腕から手指にかけての痛み、しびれ(知覚障害)、筋力低下(運動障害)を認めるようになります。同時に腕や手指の筋肉がけいれんすることがあり、時間とともに筋肉のやせが目立つようになります。さらに進行すると、服のボタンが留めにくくなったり、はしで小さい物がつまみにくくなったりします。

 あなたの場合、症状が痛みとけいれんだけですので、そこまで進行していないようですが、一度整形外科の受診をお勧めします。診察とレントゲン検査である程度の診断と治療方針について助言できると思います。また、少し症状が複雑な場合でも、磁気共鳴画像検査(MRI)や電気生理学的検査を追加することで、以前に比べて患者さんの負担も少なく、正確な診断が下せるようになってきました。

 治療には、薬(筋弛緩(しかん)剤、抗けいれん剤、抗不安薬、消炎鎮痛剤、血流改善剤、ビタミン剤など)と理学療法(頚椎けん引、消炎鎮痛処置、運動療法など)、神経ブロック、さらに手術があり、個々の病状やライフスタイルに合わせて選択します。

 手術を選択しなければならないケースもありますが、多くの場合は1~2カ月の保存的治療で症状が改善されます。完治しなくても保存的療法を行いながら、特に制限なく日常生活を送っている方も多いと思います。そのためには正確な診断と、その病気の治療経過や症状が強くなったときの対処の仕方を知ることが重要です。

徳島新聞2002年3月31日号より転載

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