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【質問】 唇の上に茶褐色の色素沈着

 30代半ばの女性です。ここ数年、濃くなった顔のシミのことで悩んでいます。目の下辺りの両ほほに左右対称にあるのと、唇の上に口ひげのようにかなりはっきりとした茶褐色の色素沈着があります。多分「肝斑」というシミだと思うのですが、何かよい治療法はありますか。雑誌やインターネットでトラネキサム酸の服用が有効だとありましたが、処方してくれる病院があるのでしょうか。



【答え】 顔のシミ -内服薬や外用剤で効果-

戸田皮膚科医院 院長 戸田則之(徳島市八万町内浜)

 慢性的に日光を浴びることによって生じる皮膚の変化を「光老化」といいます。きめが粗くなる、シワがよる、毛細血管が拡張するなどの変化があり、良性および悪性の皮膚腫瘍(しゅよう)が発生しやすくなります。また光老化によって、不規則な色素沈着や紫斑も出現します。これがいわゆる顔のシミです。

 シミには<1>肝斑(シミ)<2>雀卵斑(ソバカス)<3>老人性色素斑<4>色素沈着型接触皮膚炎(黒皮症)などの種類があり、それぞれ分けて説明します。

 【肝斑】一般にシミとよばれているものは肝斑を指しているケースがほとんどです。20歳代後半から40歳代の女性に多く、主に顔面、特にほお、額、まゆ毛や口の周囲に現れ、境界のはっきりした左右対称の褐色の色素斑です。妊娠時に目立ち、出産が終わると少し薄くなることがあります。

 また経口避妊薬(ピル)の服用などをきっかけにできる女性が多いため、女性ホルモンが原因の一つとも考えられています。肝斑は、紫外線にさらされやすい部位にでき、春先から夏の紫外線の強い時期に濃くなり、紫外線の弱い時期には薄くなります。このことから、紫外線が肝斑の発症や増加に重要な役割を果たしていると考えられます。

 【雀卵斑】色白の人に多く、家族内発生がみられますので、遺伝が要因ではないかと指摘されています。5ミリ以下の褐色の小色素斑が顔面、手の甲、前腕に多発します。

 【老人性色素斑】長年にわたり紫外線を浴びることによって、メラニンをつくる酵素が活性化し、表皮内にメラニンがまとまって増えるために起こります。40歳代以降の男女の顔面や手の甲に生じ、境界のはっきりした褐色斑が多発します。

 【色素沈着型接触皮膚炎】化粧品やせっけんなどによるかぶれを繰り返すため、真皮上層にメラニン色素が脱落、集積してシミを生じます。初めは軽いかぶれですので、気づかずに同じ化粧品を使用し続けていると、顔全体が褐色、黒褐色の色素沈着で覆われてきます。この場合、色素や香料などの原因物質を含まない化粧品やせっけんを使い、直射日光を避けると、1~2年で徐々に消えていきます。

 次に治療について述べます。

 日焼けによるシミ、ソバカスを防ぐために、美白剤としてアルブチン、コウジ酸、ビタミンCおよびその誘導体が厚生省から承認されています。これらを含んだ化粧品は「美白化粧品」として市販され、ある程度効果はあるようです。

 また近年、画期的なレーザー治療が開発されました。これは非常に短い時間、強いレーザー光線を照射するため、周囲の組織に影響を与えずにメラノサイト(色素細胞)を選択的に破壊します。この新しいレーザーの開発によりさまざまな色素異常症の治療が可能になりました。

 さて、ご質問の顔のシミですが、年齢、発生部位などから考えて肝斑と思われます。肝斑の治療はコウジ酸や油溶性甘草エキス外用などによる効果が報告されています。内服にはトラネキサム酸、グルタチオン製剤、ビタミンC、ビタミンEなどが用いられます。残念ながらレーザー治療は無効の場合が多いようです。

 また、ハイドロキノンにビタミンA酸、ステロイドを配合した外用剤が効果を上げていますが、これは市販されていません。ともかくどのタイプのシミであるかをはっきりさせるため、まず皮膚科あるいは形成外科の専門医を受診されることをお勧めします。

徳島新聞2002年3月24日号より転載

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