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【質問】 字を書いたり家事が苦痛

 70代半ばの主婦です。27年前に骨折した右肘(ひじ)が一昨年末から痛み始め心配です。病院や整骨院で治療し、はり治療もしました。湿布薬を塗ったり、赤外線で温めたりして冷やさないようにしていますが、治る兆しがありません。字を書くときには筋がどこかに引っかかるような感じで痛みます。フライパンを持ったり、米を研いだりするなどの家事が苦痛です。私の肘は治らないのでしょうか。



【答え】 肘の痛み -骨や関節内の検査必要-

田村病院 副院長 田村 阿津王(徳島市新浜本町2丁目)

 手を十分に働かせるには、肘がよく動き、しっかりと手を支持する必要があります。肘に痛みがあると、家事などの日常生活動作にも支障をきたします。

 ご質問の内容からは、骨折の部位や転位(ずれ)の程度が分かりません。しかし骨折治療のあと、25年間にわたり、あまり痛みはなく、肘の動きも悪いとは書かれていないので、骨折治療後の経過は比較的よかったものと思われます。肘の痛みは、長い間に何かの原因が加わり、発生したと考えられます。

 肘関節は上腕骨(上腕の骨)と橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)(前腕の骨)からなり、肘を曲げたり伸ばしたり、前腕をねじることができる仕組みになっています。

 関節を構成する骨は軟骨に覆われ、「上腕骨と橈骨」、「上腕骨と尺骨」、「橈骨と尺骨」の三つの関節面からなり、関節包(関節を包む袋)、靭帯(じんたい)などによって補強されて、関節の近くの骨には筋や腱(けん)が付いています。従って、関節内外のさまざまな原因で肘の痛みが起こります。

 ご質問にある肘の痛みの原因として、まず挙げられるのは変形性肘関節症です。加齢、老化などによって関節の軟骨がすり減り、逆に骨棘(こつきょく)(骨の出っ張り)ができた状態です。炎症やけがの後に起こることもあります。

 症状は膝(ひざ)や股(こ)関節の関節症の場合と同じです。通常、安静時には痛みをあまり感じることはなく、動作を始めたときに痛みを訴え、そのまま動かせていると次第に軽くなるのが普通です。しかし、重症になると持続的な痛みや運動痛、あるいは常時不快感を訴えるようになります。

 関節内の変化が進むにつれて関節の運動障害も強くなり、日常動作や労働に支障をきたすようになります。保存的療法として、抗炎症剤の服用や湿布、温熱療法などの物理療法、関節内注射などが挙げられます。

 また、字を書くときに筋がどこかに引っかかったような感じの痛みがあるようですので、関節の中の介在物(関節の表面がはがれたものや骨・軟骨の小さな塊など)がないか調べる必要があります。関節ねずみと呼ばれ、介在物が関節の中を動いて関節の間に引っかかり、痛みの原因になることがあります。

 関節外の原因として、関節の近くに付いている筋や腱が強い炎症を起こしている可能性がありますが、単独ではひどい症状が長く続くことは少ないと考えられます。

 あなたの肘の痛みの原因については、一度関節の専門医を受診されて、詳しいレントゲン検査や骨・軟骨、関節内を調べる各種の検査を受けることをお勧めします。

徳島新聞2002年2月10日号より転載

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