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【質問】 右手足のしびれ、痛みが続く

 60代の男性です。40日ほど前に右手足がしびれ、病院に行きました。診断の結果、糖尿病による脳血栓で、約40日間入院しました。退院後は薬を服用していますが、右手足のしびれと痛みは治まりません。どうすればよいでしょうか。



【答え】 脳梗塞の後遺症 -薬剤とリハビリで様子を-

田岡病院 脳神経外科部長 村山 佳久(徳島市東山手町1丁目)

 脳梗塞(こうそく)(脳血栓)については、この欄をはじめ多くの場で紹介されており、症状や予防法について、いろいろ関心を持たれていることと思います。一方で、脳梗塞になり後遺症を残した場合、今後どのようにしたらよいか悩まれている方も多いでしょう。そこで、脳梗塞後遺症の一つである知覚障害(しびれや痛み)についてお答えします。

 まず知覚とは、サラッとした洗濯の利いたものを気持ち良いと感じたり(触覚)、針が刺さってイタッと感じたり(痛覚)、熱いものに触ってアツッと感じたり、いい湯に入って気持ちいいなと感じたり(温度覚)することです。普通、ほとんどの刺激は気持ちが良いと感じるか、気づかないことが多いものです。しかし病的な状態になると、不快や苦痛として感じます。

 それぞれの知覚障害の程度、性状により、知覚鈍麻、知覚脱失、知覚過敏、知覚異常と呼ばれます。この中で、知覚鈍麻、知覚脱失とは、物が触れたり、痛いもの、熱いものが触ったりしても感じ方が鈍い(鈍麻)か、まったく感じない状態(脱失)ですが、慣れるとさほど苦痛に感じないことが多いようです。

 後遺症として不快、苦痛に感じるのは主に、触覚、痛覚、温度覚における知覚過敏と異常感覚です。病的なのは、服や毛布などが触る程度の軽い刺激で痛く感じる触覚過敏、何も触っていないのにしびれたりビリビリしたりする異常感覚、寒い時期にジンジンしたり痛く感じたりする温度覚過敏です。

 ご質問のあなたは、脳梗塞の危険因子の一つである糖尿病を持っておられますが、他には高血圧症、高脂血症、心臓疾患、喫煙などの因子があります。症状として、しびれと痛みが出ましたが、知覚障害をきたす部位としては脳幹部、視床そして内包が主で、これらのどこかに脳梗塞が起こったと考えられます。

 特に視床、脳幹部の梗塞による知覚障害が多く、症状が始まるのは発作後1カ月以内が圧倒的に多いようです。また、脳梗塞だけでなく脳出血でも起こりますし、運動麻痺(まひ)、言語障害、嚥下(えんげ)障害などと一緒に起こることも多くあります。

 さて治療法ですが、主に薬物療法とリハビリテーションがあります。薬物療法は、脳幹部や視床での痛みの伝導路を断ち切る薬剤と、痛みに対する恐怖や不安を軽減させる安定剤が主で、まずこれら薬の効果をみます。また、リハビリテーションでは、温熱療法などを試みるところもあるようです。特殊な例として、持続性、突発性の強い、時に耐え難い痛み(視床痛)に対して、定位脳手術という方法もありますので、脳神経外科などで相談してください。

 ご本人の取り組みとしては、痛みに対する不安や注意を他に向ける生活様式に切り替えることが大切で、効果があると思います。毎日打ち込めるものを持つことです。例えば旅行好きの人は治療を兼ねて温泉に行くとか、歌好きな人はカラオケを楽しむなど、趣味に打ち込むことで痛みを忘れさせ、気分を落ち込ませない前向きな生活を心がけることが重要であると考えます。

徳島新聞2001年9月2日号より転載

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