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【質問】 0.3cm大の腺腫は大丈夫?

 30代後半の主婦です。2年前に人間ドックを受け、甲状腺右葉に0.3cm大の腺腫があるといわれました。今年も受診したところ、変化はなく、経過観察するとのことでした。詳しい説明を受けていないので、そのままにしておいていいのかどうか悩んでいます。腺腫とはどんなものなのでしょうか。



【答え】 甲状腺腺腫 -悪性化への見極め大切-

徳島市民病院 外科診療部長 露口 勝

 甲状腺の病気には、甲状腺全体が腫(は)れるびまん性甲状腺腫と、結節が生じる結節性甲状腺腫があります。

 びまん性甲状腺腫ができる代表的な疾患として甲状腺機能亢進(こうしん)症(一般にはバセドー病)と、慢性甲状腺炎(橋本病)があります。これらの疾患は、甲状腺ホルモンの異常、甲状腺自己抗体の存在などにより血液検査で診断されます。

 一方、結節性甲状腺腫は腫瘍(しゅよう)性疾患で、良性と悪性のものがあり、種々の画像診断や細胞検査で良、悪性が鑑別されます。

 良性の結節としては、お尋ねの甲状腺腺腫と腺腫様甲状腺腫があります。甲状腺腺腫は良性腫瘍で、通常は前頚(ぜんけい)部の腫脹(しゅちょう)を知人から指摘されるか、自分で気づいて来院されます。まれに甲状腺ホルモンを過剰に分泌し、甲状腺機能亢進症状をみる中毒性腺腫となることがあります。大抵は目立つほど大きい場合や圧迫症状をきたしたときに手術の対象になります。薬剤治療の効果は期待できません。

 さて、ご質問の人間ドックで発見された甲状腺結節ですが、0.3cmと極めて小さいので甲状腺の触診ではなく、超音波検査で発見されたものと思われます。最近の超音波検査装置は機器の改良が進み、従来では見えなかった小さい結節も多数発見されるようになりました。しかし、小さい病変ゆえに確定診断が難しくもなっています。

 あなたの場合、2年間経過しても結節の大きさ、性状に変化がないようですので、現在は何も処置をせず、経過観察だけで十分と思います。

 一般に結節性甲状腺腫の診断は、結節の触診、頚部レントゲン検査、超音波検査などの画像診断で結節の大きさ、硬さ、周りの性状、内部構造、石灰化の有無などを調べ、良性か悪性かを判断します。その結果悪性が疑わしい場合や、結節が大きいときには頚部から結節に細い注射針を刺して細胞を吸引採取し、悪性でないかどうか細胞検査を行います。これが通常の診断法です。

 あなたの場合は結節が極めて小さく、細胞検査をしても、正確に結節から細胞が採取できるかどうか確信が得られないのではないかと思われます。このため超音波検査で良、悪性をある程度判断し、その後の経過で結節が大きくなるかどうか、性状が変わらないかどうかなど、悪性の可能性を吟味しながら観察する方法が一番よいのではないかと思います。

 実際、結節が小さいときは悪性の性格が画像上出ていないこともあるため、経過観察は大切です。今後は1~2年間隔で超音波検査を受ければよいと思います。変化がないのは悪性の可能性が少ないことですので、あまりご心配なされないようにしてください。

徳島新聞2001年8月19日号より転載

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