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【質問】 何もする意欲がない

 30代の主婦です。今年に入ってからうつ状態になり、抗うつ薬を飲んでいます。それでも調子の悪いときは、朝、目覚めたときから気分が悪く、家事や育児ができません。何もする意欲がなく、食欲さえわかず、とてもつらい状態です。専門のカウンセリングを受ける必要があるのでしょうか。内科の先生はまだ精神科へ行かなくても大丈夫といいます。ちなみに1月から月経がありません。子供は1歳でまだまだ手がかかります。



【答え】 うつ病 -休養することが大切-

城西病院 精神科医師 枝川 浩二(徳島市南矢三町3丁目)

 人間はだれしも一度や二度は仕事や勉学がはかどらず、スランプ状態に陥ることがありますが、いつとはなしに回復し、活発に活動できるようになる復元力を持っています。

 ところが、いつまでも沈んだ気持ちが回復しないことがあります。それがうつ病です。ご質問のケースは、うつ病による抑うつ状態の可能性が高いと思われます。

 うつ病は必ず治る病気ですが、近年、確実に増えているといわれています。世界保健機関(WHO)では、人口の3%がうつ病患者と概算しており、4~5人に1人が一生のうちに一度はなるという報告もあります。その意味では、うつ病はだれもがなりうる病気ですし、「心の風邪ひき」のようなものです。

 うつ病はどうして起こるのか、その原因はいまだに不明です。きちょうめんで周囲を気遣うタイプの人が、過重なストレスにさらされて脳機能の異常を来し、その結果うつ病になると考えられています。「気の持ちよう」で起こるのではなく、病気なのです。

 うつ病の症状ですが、憂うつ感、自責感、物事が決められないといった思考力・判断力の低下、何事もおっくうでやる気が出ない、興味や関心がわかないなどの精神症状に加えて、眠れない、体がだるく疲れやすい、食欲がない、胃がもたれる、胸がドキドキする、手足や腰などの痛み・しびれ・冷え、性欲の低下、月経異常など、各種の身体症状が出てきます。また、自殺を考える患者も多いため要注意です。

 身体症状のみが表面に現れて、抑うつ気分が目立たない軽症のうつ病を「仮面うつ病」と言います。内科的にはこれといった異常がないにもかかわらず、上記のような身体症状が続く場合は、うつ病を疑ってみることが必要です。

 うつ病の治療は休養することが第一です。仕事などの負担をできるだけ減らし、心と体をゆっくり休めましょう。同時に専門医による抗うつ薬を中心とする薬物療法とカウンセリングなどの精神療法が必要です。治療は早期に始めるほど効果も上がります。

 抗うつ薬はSSRI、SNRIといわれる、副作用が少なく服用しやすい新しい薬が使われるようになりました。抗うつ薬は飲み始めて1~4週間で徐々に効果が出てきますが、回復は一進一退であることが普通ですので、続けて服用することが大切です。

 また、治療には家族の理解と協力が不可欠です。家族の励ましは逆効果です。ゆっくり休養できるよう温かく見守るとともに、家事などの負担を減らしてあげることも大切です。

 さて、ご質問に対する回答ですが、かかりつけの医師とよく相談した上で、場合によっては紹介状をもらい、できれば家族も同伴して精神科もしくは心療内科を受診されてはどうでしょうか。そこには、うつ病やうつ状態の治療に経験豊富な専門医がいます。専門医の助言がカウンセリングとなるので、助言に従って治療を受けることが回復への近道です。

徳島新聞2001年6月17日号より転載

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