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【質問】 ふくらはぎがしびれ、腰痛も

 50歳の女性です。4年前に追突事故に遭いました。当時から首の痛みや肩凝りがあったのですが、次第に右足のふくらはぎがしびれたり痛んだりするようになり、最近では腰痛も時々あります。針治療、整体にも通いましたが治まりません。テレビで見たペインクリニックを受診したいのですが、徳島にもありますか。どのような治療をするのか知りたいのです。



【答え】 ペインクリニック -痛みの悪循環を断ち切る-

保岡クリニック論田病院 院長 保岡 正冶(徳島市論田町大江)

 痛みは医療の出発点であり、医療機関を訪れる患者の訴えの多くは、頭痛、腹痛、腰痛など、何らかの形で痛みと関係しています。診断がつき、適切な治療により病気が治ることで痛みも消えるわけです。しかし、原因や治療法が分かっても、痛みを和らげることが困難な場合や、鎮痛剤などの治療法では十分に対応できない場合も多くみられます。

 痛みは体の防御のために必要な知覚の一種ですが、過剰な痛みや慢性の痛みは、体に悪い影響を及ぼします。例えば、歯痛が続くと気分が優れず、食事が進まなくなり、日常生活に障害が出ることはだれもが経験しているでしょう。

 ペインクリニックは、このような痛み自体がもたらす体への悪影響の除去を目的とした診療科です。診療の特徴は、理学療法や薬物療法とともに、神経ブロック療法を主な治療手段として取り入れている点にあります。最近では、心理療法や手術療法も加え、いろんな分野の専門家が協力して集学的な治療を行う施設も増えてきました。

 神経ブロック療法について少し説明します。神経ブロックとは、注射針を用いて局所麻酔薬を神経の周囲に注入し、神経の伝達を遮断する手技のことをいいます。ただし、一時的に痛みを止めるために注射をすることが本来の目的ではありません。

 例えば、皮膚を切ると、周囲の血管が収縮して出血を防ぐ機能が働きますが、反応が過剰に続けば、二次的に血液の流れが悪くなり、筋肉がけいれんして酸素が不足する状態になります。その結果、交感神経が緊張して、局所に新たな痛みの原因が生まれ、いわゆる痛みの悪循環ができてしまいます。

 神経ブロックは、このような悪循環に陥った痛みの反射路を断ち切る作用があります。効果として、血行がよくなり、組織の腫(は)れを軽減させますので、痛みの緩和とともに原因となる疾病自体の回復が期待できるわけです。その他、血流障害によって引き起こされる凍傷やレイノー病など、痛み以外の各種疾病にも応用されています。

 ご質問にある症状は、痛みの悪循環の仕組みで一部説明できるかと思います。治療法の一つとして、神経ブロックや痛みの部位に、局所麻酔薬を注射する方法などが挙げられます。ただし、受けられた各種療法や理学療法、薬物療法は、それぞれの特性と利点があり、ペインクリニックでも用います。特に針治療は多用されています。

 なお、注射や針治療が怖い患者には、レーザーや局所麻酔薬テープなど刺激の少ない代替法を用いる工夫をしています。

 最後に、県内でペインクリニックを主体に治療している医療施設は、当院のほかに、徳島大学医学部付属病院麻酔科、篠原クリニック(徳島市八百屋町三)、鎌田クリニック(同市名東町一)がありますのでご相談ください。

徳島新聞2001年5月27日号より転載

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