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【質問】 7歳の娘の手足が毛深い

 7歳の娘のことで相談します。手足が普通の人より毛深く、夏になると気になるようです。最近、レーザーで毛をなくすことができると皮膚科で聞きましたが、どんな治療なのでしょうか。



【答え】 多毛症 -病的なものか受診を-

徳島大学医学部附属病院 形成外科教授 中西 秀樹

 お子さまが毛深いとのお悩みですが、文面だけでは多毛と呼ばれる病的状態なのか、単に毛深いだけで病気ではなく生理的な状態なのか、はっきりしません。

 多毛には全身性と局所性のものとがあり、またそれぞれ生まれつきのものと何らかの原因による後天的なものに分けられます。それらの原因として生理的(赤ちゃんは一般的に全身が毛深い)、遺伝的、ホルモン、黒あざや茶あざ、薬剤によるものなどが考えられます。

 あざなどに伴う病的な多毛も単に毛深い、むだ毛を取りたいといった生理的な状態のものも、治療に大差はないので多毛症の一般的な治療について述べます。

 治療は毛ぞり、毛抜き、脱毛クリーム、脱毛ワックスと過酸化水素水による脱色などの外用療法と、電気針脱毛、レーザー脱毛などの外科的治療があります。

 新しい治療法であるレーザー脱毛は、米国で約10年前に登場し、近年日本に広まってきました。これは黒あざの治療に用いられているレーザーと同じ原理です。黒い物質に吸収される特性があるレーザーを照射して、毛や毛包の色の元になっているメラニン色素に吸収させ、その際に生じる熱で毛包を破壊して毛を生えなくさせる方法です。この治療で重要なのは、コンピューター制御によって、高いエネルギーを短時間に照射し、毛の周りの組織を強く破壊しないことです。

 また、どのような毛に対しても効果があるわけではありません。毛の成長には成長期、退行期、休止期と3段階あり〈図参照〉、これらを繰り返しています。レーザー脱毛に効果があるのは、毛の構造が明らかな成長期の毛だけです。個人差がありますが、数回の照射が必要となります。

 この治療では熱が発生しますので、照射後に色が着いたり(色素沈着)、やけどしたりする可能性もあります。このため患者の皮膚と毛の状態を診察したうえで、肌へのダメージを最小限に抑えるため、少しの範囲で試験的に照射、脱毛に効果的なレーザーの強さを確認するなどの慎重な治療が大切です。

 なお、毛が焼ける際に多少痛みがあり、我慢できない方には痛み止めのクリームを塗ります。照射後は皮膚表面が軽い炎症を起こしますので、抗炎作用のある軟こうを3日程度塗ります。今のところ病的な多毛でも、レーザー治療には保険が適用されず自費となります。従ってどのようなレーザーの機種を用いるか、どのような副作用が生じる可能性があるかなどをきちんと説明してもらい、万一、やけどなどのトラブルが起きた場合でも適切な対応ができる施設での治療をお勧めします。

 相談者のお子さまはまだ7歳ですので、病的な状態でなければ生えている毛は産毛のような細い毛ではないかと思われます。産毛の状態では、レーザー治療はあまり効果がないと考えられます。まず皮膚科あるいは形成外科を受診され、病的な多毛か単に毛深いのかを診察されてはいかがでしょうか。

徳島新聞2001年3月18日号より転載

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