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【質問】 頭皮全体と額に湿疹が

 25歳の息子の頭皮全体と額に湿疹ができています。高校までは何もなかったのですが、大学に入り親元から離れて生活が変わったのが原因なのか、いまだに治りません。栄養不足なのでしょうか。頭髪は多い方です。湿疹で頭皮が痛いのか、髪の手入れの際は、くしを浮かせてといています。皮膚科を受診しましたが、先生は「にきび」だといわれました。うんではいませんが、頭皮全体は真っ赤になっています。



【答え】 脂漏性皮膚炎 -生活改善と薬で対処-

齋藤皮膚科泌尿器科 副院長 齋藤 一夫(徳島市中通町2丁目

 質問から考えられる皮膚病としては<1>脂漏(しろう)性皮膚炎<2>アトピー性皮膚炎<3>尋常性乾癬(かんせん)などがありす。頭皮全体と額に病変があって他の部位に目立った皮疹(ひしん)がないとすれば、<1>の脂漏性皮膚炎が最も可能性が大きいように思えます。

 さて脂漏性皮膚炎ですが、発症時期によって2つに分けられます。乳児期にかかる同炎は自然に治ることが多いのですが、青年期以降に発症すると再発を繰り返し、治るまでに時間がかかります。

 後者の成人の脂漏性皮膚炎は、頭や顔などの皮脂分泌の多い場所(脂漏部位)や腋の下など皮膚が擦れやすい所に、紅斑(こうはん)(皮膚が紅くなること)と鱗屑(りんせつ)(皮膚が薄くはがれ落ちたり、落ちずにくっついたりしている状態)が見られる湿疹(しっしん)の一種です。

 脂漏性皮膚炎の原因は単一的なものではなく、いろいろな要因が影響して発症、悪化するといわれています。脂漏性皮膚炎を発症・悪化させる要因として<1>入浴不足、洗顔不足などによる皮脂貯留<2>食事の偏りによるビタミンB群の不足<3>寝不足などの生活サイクルの乱れ<4>生活環境の変化によるストレス<5>皮脂の多い場所を好むカビの増加-などが考えられています。

 このような脂漏性皮膚炎に対処するには、刺激の少ないせっけんや抗真菌剤配合シャンプーなどを使用して皮膚を清潔にすること、ビタミンB群(ミルク、豚肉、レバー、ホウレンソウ、シイタケなど)を多く取る食生活、休息や睡眠を十分にとり、規則正しいリズムで生活し、ストレスや過労をため込まない、などの日常生活の改善と、医師が処方する塗り薬や飲み薬があります。

 皮膚の炎症を抑えるにはステロイド外用剤が非常に有効ですが、脂漏性皮膚炎は長期間続く慢性の疾患であるために、長期使用による副作用がしばしば問題となります。従って最近では、発症、悪化の要因であるカビを抑える外用抗真菌剤が使用されるようになりました。飲み薬ではビタミン欠乏を補うためのビタミンB群の内服と、かゆみがある場合には抗ヒスタミン剤も使用されます。以上、成人の脂漏性皮膚炎についてご説明いたしました。

 息子さんの皮膚症状の出現には、大学に入学して親元から離れるという生活環境の変化に伴うストレス、食生活の偏りなどが関係しているように思われます。

 冒頭に示した他の疾患、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、あるいは皮膚科の先生に言われたにきびなどの可能性もありますので、ぜひもう一度皮膚科専門医への受診をお勧めいたします。

徳島新聞2001年3月4日号より転載

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