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【質問】 妊娠・出産で体に変化

 31歳の女性です。妊娠してから頑固だった便秘が解消され、出産後半年たった今も快調です。ところが先日の人間ドックで胃下垂と診断されました。自覚症状がなかったので驚きました。妊娠と便秘、出産と胃下垂は何か関連するのでしょうか。胃下垂は放置しておいても大丈夫でしょうか。



【答え】 便秘と胃下垂 -生活改善し軽い運動を-

松村内科・胃腸科 院長 松村 光博(徳島市北佐古二番町)

 便秘とは1日の排便量が異常に少なくなったり、2~3日に一度しか排便がなかったり、残便感がある場合などが考えられます。ただ便秘であっても、本人に全く苦痛がなく、健康な生活ができるなら特別な処置をする必要はありません。

 一般的には2~3日排便がないと、おなかが張り、腹痛、不快感などの症状が認められますが、そのような場合には治療しなければなりません。

 便秘は器質的便秘と機能性便秘に大別され、機能性便秘は弛緩(しかん)性便秘、けいれん性便秘および直腸性便秘に分けられます。日常私たちを悩ませるのは機能性便秘です。

 特に女性に多いのが、腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱まる直腸性便秘です。一般的には妊娠により女性ホルモンの分泌が増えるため、腸の蠕動運動が抑制されます。また子宮の増大による腸の運動抑制、運動不足による腸の運動減退によって、女性は妊娠すると便秘になりやすいと考えられています。

 あなたのご質問では、妊娠前後の生活習慣が明らかではありませんが、妊娠しても食習慣や水分摂取量、身体活動などを改めることにより、少なくとも3分の1近い人に便秘の改善が認められています。

 朝の目覚めとともに、結腸反射といって腸が動き始めるため、毎朝起床後に冷たい水や牛乳をコップ1~2杯飲んだり、便量を増加させる食物繊維の多い食べ物を食べたりするとよいでしょう。例えば穀物では玄米、野菜ではキャベツやニンジン、玉ネギ、ブロッコリー、カリフラワー、ジャガ芋、トマト、果物ではイチゴにカキ、モモ、ナシ、イチジクです。

 さらに朝食はゆとりを持ってしっかり食べ、トイレに行って毎日規則正しい排便をする習慣をつけることが大切です。また、適度の運動も腸の運動を促すために有効です。日常生活の改善、食生活の工夫が肝要で、規則正しい便通を習慣化することが大切です。

 胃下垂症は結腸下垂、移動盲腸、S状結腸過長症とともに内臓下垂の一つと見なされています。胃下垂が注目されるようになったのは、胃のエックス線検査法が普及してからです。一般に健康な人に多くみられることから、欧米では胃下垂は疾患でないとする見解が支配的です。

 女性に多くみられるのも特徴です。出産に伴った胃下垂の原因として、緊張していた腹壁が出産によって弛緩することが考えられます。一般的には無症状ですが、慢性胃炎を併発している場合は腹部の膨満感、重圧感、胸やけ、げっぷ、腹部鈍痛などの症状が出ることがあります。特別な治療法はありませんが、体操や軽いスポーツで腹壁筋を強化することが有効だと考えます。

徳島新聞2000年11月19日号より転載

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