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【質問】 たびたび扁桃腺がはれ熱が出る

 小学校2年の孫娘のことでお尋ねします。5歳ごろから2~3カ月に一度、扁桃腺(へんとうせん)がはれ、39~40度の熱を出します。そのときは学校を休ませて小児科へ連れて行きますが、また学校へ行けるようになるまでに1週間ほどかかります。連日、抗生物質を飲ませるのも気になり、いっそ扁桃腺を切ってしまったほうがいいのではないか、と迷っています。よい方法を教えてください。また、この病気は小児科と耳鼻科のどちらで診てもらったらいいのでしょうか。



【答え】 扁桃腺炎 -まず全身状態の検査を-

戸島小児科 院長 戸島 健治(美馬郡脇町)

 のどの奥にある扁桃腺は、体の呼吸器、消化器の入り口にあり、その付近のリンパ組織(鼻の奥のアデノイド、舌の根元の舌根扁桃など)とともに、外部から体に侵入するウイルスや細菌を防御する大切な役割をしています。

 保育所や幼稚園で集団生活を始めると、ウイルスや細菌に接触する機会が増え、扁桃腺などに炎症を起こして発熱することが多くなります。しかし、これは防御反応で、一度この反応を体が経験すると十分な免疫ができ、同じウイルスや細菌に触れても病気にかかりにくくなります。つまり、年齢とともに扁桃腺の炎症による発熱などは減少します。

 事実、扁桃腺は、4~5歳ごろが最も大きくて、その後、年齢とともに縮小するといわれています。ところが、ウイルスや細菌などに感染する機会が少なかったり、感染による免疫防御反応が不十分だったりすると、学童期になっても、扁桃腺にウイルスや細菌が頻繁に感染し、扁桃腺炎を繰り返します。そして、扁桃腺肥大は持続します。

 感染のうち、ウイルスによる扁桃腺炎は数日間で治まることが多いのですが、ある種の細菌による扁桃腺炎では、適切な抗生物質を2週間ほど服用しなければならないこともあります。

 かつては、扁桃腺やアデノイドを比較的、簡単に摘出していましたが、今日、これらの組織は、前述したように、体の重要な免疫機能を担っていることが分かってきました。

 従って現在では、次の条件に該当している場合に限って摘出するようになっています。

 <1>学童期に年5~6回以上扁桃腺炎にかかり、学校生活に支障をきたす場合<2>扁桃腺に、ある細菌が常に感染していて、それが腎臓などに悪い影響を与えている場合<3>扁桃腺などのリンパ組織が肥大して、鼻閉、いびきなどによる呼吸障害、それによる睡眠障害、さらに成長障害が見られる場合<4>扁桃腺などのリンパ組織の肥大が、慢性副鼻腔(びくう)炎や慢性中耳炎の原因になっている場合。

 さて、お孫さんの場合ですが、同年齢の子供さんと比べ、扁桃腺炎にかかる頻度が年に4~5回と少し多いようです。しかし、扁桃腺の摘出には、上述した条件が医学的に必要と思われますので、まず、小児科で全身状態の検査を受けてください。それから、耳鼻科で局所の検査を受け、主治医と保護者と相談の上、扁桃腺を摘出するかどうか決められるようお勧めします。

徳島新聞2000年11月12日号より転載

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