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【質問】 のどが鳴って苦しそうな孫

 生後2カ月の孫娘のことでお尋ねします。身長は標準より高く、体重は少々軽いようです。とても元気ですが、一つだけ心配なことがあります。それはのどがピィーピィー、ゼイゼイとうるさいくらいに鳴ることです。寝ているときも同じです。鳴らないときもありますが、鳴っている時間が多いようです。とっても苦しそうで、見ていられません。病院では「半月ほど様子を見ましょう。手術をするかも分かりません」といわれたそうです。どういう病気なのでしょうか。早く治療しなければならないのではと、気をもむ毎日です。



【答え】 先天性喘鳴 -時間かかるが焦らずに-

徳島市民病院 小児科診療部長 山下 和子

 小児、特に乳幼児は呼吸に伴って「ゼイゼイ」「ピューピュー」といった雑音が聞かれることが、しばしばあります。このような症状を喘鳴(ぜんめい)と呼んでいます。

 喘鳴は、鼻から咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、気管、気管支にいたる空気の通り道(気道)に狭窄(きょうさく)があり、そこを空気が通るときの気流の乱れによる雑音であると説明されています。子供の気道は大人に比べて非常に細く、気道の壁も軟弱なので、狭窄を起こしやすい素地を持っているといえます。

 喘鳴は、息を吸い込むときに聞かれる吸気性喘鳴と、吐くときの呼気性喘鳴に分けられます。吸気性は上気道(咽頭から喉頭)、呼気性は下気道(気管から気管支)の狭窄によって起こります。喘鳴を起こす疾患は多く、生まれつきの気道の構造異常による先天性喘鳴、炎症による粘膜のはれや分泌物がたまることによる急性喉頭炎、気管支炎、そのほか気管支喘息のようにアレルギーが関係するものや、誤って異物が気道に入ることによるものなどさまざまです。

 あなたのお孫さんは生後2カ月で、体重は少し軽いようですが、とても元気ということなので、少なくとも喘鳴はあっても呼吸が苦しい状態ではないようです。生後間もないときから症状があり、先天性喘鳴が考えられます。

 先天性喘鳴は主として、咽頭、喉頭に狭窄の原因があり、吸気時の「ゼイゼイ」「ピューピュー」という喘鳴が特徴です。狭窄の原因として最も多いのが喉頭軟化症です。喉頭の入り口にあって、気道への異物の侵入を防いでいる喉頭蓋(がい)や、その周辺の軟骨部分が軟弱で、吸気のたびに喉頭蓋がまくれこむように気道をふさぐのが原因です。

 この場合、喘鳴は、ほ乳時や泣いたときに強くなり、静かに眠っているときには軽くなります。また、あお向けより腹ばいにしてやると、軽くなります。喘鳴は生後2-4週ごろ始まりますが、ほとんどが5カ月ごろより改善し、2歳ごろまでには自然に治ります。

 その他の原因には、喉頭の先天性狭窄や横隔膜症、神経麻痺(まひ)、嚢腫(のうしゅ)や血管腫などの良性腫ようがあります。

 成長に伴って、のどの構造もしっかりしたものとなり、先天性喘鳴の多くは自然に直ります。しかし気道狭窄の程度には個人差があり原因もさまざまですから、主治医に経過をみてもらい、適当な時期にX線撮影や気道を直接見るファイバースコープ検査を受けるとよいでしょう。

 狭窄の原因がはっきりすれば手術などの処置も決まります。喘鳴が大きくても機嫌がよく、食欲、睡眠も良好で体重の増加も順調なら、急ぐ必要はありません。ただし症状がある子供は、ほ乳時にむせたり、誤飲しやすいこともあるため、時間をかけて少量を数回に分けて飲ませることや、頭を起こして飲ませるなど、誤飲しにくい体位を取る工夫も必要です。

 風邪で気道が感染すると、喘鳴が強くなり、呼吸困難となることもあるため、早めに受診されるほうがよいでしょう。症状が治まるまでには少し時間がかかりますが、焦らずゆったりと保育されることが大切です。

徳島新聞2000年6月18日号より転載

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